横浜DeNAベイスターズが下剋上日本一を果たした理由をファンの声援×メンタルという視点から考える

2024年、日本プロ野球界において横浜DeNAベイスターズが26年ぶりの日本一を達成した瞬間は、多くのファンにとって感動の嵐を巻き起こしました。
私がサポートしている選手もベイスターズの一員としてクライマックスシリーズや日本シリーズで試合に出場しており、非常に感慨深い試合となりました。

横浜DeNAベイスターズはセ・リーグ3位でペナントリーグを終え、まさに「下剋上」と呼べる快進撃で日本一を手にしました。
なぜ彼らがこの奇跡的な勝利を成し遂げることができたのか、その理由の一つとしてファンからの熱狂的な声援が挙げられます。

特に、スタジアムでの大声援や試合中に飛び交う「がんばれ!」の声は、選手たちのパフォーマンスに良い影響を与えることが科学的に示されています。
この現象には、脳科学、心理学、スポーツ科学の観点から多くの理由があります。

ここではアスリートにとってファンから受ける声援がパフォーマンス発揮にどのような影響を与えるかについて、メンタルという観点から説明していきます。

目次

声援が脳に与えるポジティブな影響

応援を受けると、選手の脳は様々な反応を示します。
大きな声援が響くとき、脳内では「ドーパミン」や「エンドルフィン」といったホルモンが分泌されます。
これらは「幸福ホルモン」とも呼ばれ、喜びややる気を高める効果があります。

エンドルフィンは、苦痛を和らげ、ストレスを軽減する効果があります。緊張する試合の場面でも、ファンの声援によってリラックスし、プレッシャーを乗り越える力が引き出されることが期待されます【4】。

ドーパミンは、報酬系と呼ばれる脳の領域で分泌され、目標達成の意欲を向上させます。選手が観客からの声援を受けると、勝利への意欲が強まり、より一層集中してパフォーマンスを発揮できるのです。

心理学的な観点:応援による「同一化」とモチベーション

心理学では、応援する行為は「同一化」と呼ばれるメカニズムに基づいています。
応援しているファンと選手の間に共感が生まれ、選手は「自分のためだけでなく、応援してくれる人のためにも頑張ろう」という気持ちを強く持つようになります【1】。

この「同一化」の効果は、特にスポーツのような競技性の高い場面で顕著に現れます。
選手は観客の期待を感じ、それに応えようとすることで、通常以上のパフォーマンスを発揮できるのです。
また、観客の声援は選手にとって「社会的支援」として機能し、精神的な強さを引き出す効果があります【2】。

声援によるフィジカルな影響:ストレスホルモンの抑制

スポーツの現場では、緊張や不安がパフォーマンスに悪影響を及ぼすことが知られています。
しかし、声援を受けることで「コルチゾール」というストレスホルモンの分泌が抑えられることが研究で明らかになっています【6】。
観客からの励ましの言葉や拍手によって選手がリラックスし、心拍数が安定することで、集中力が高まり、身体の動きもスムーズになるのです。

さらに、声援がリズム感やタイミングに影響を与えることもあります。
たとえば、ランナーやスイマーなど、リズムを大切にするスポーツでは、観客の声援がリズムを保つ助けとなり、疲労を軽減する効果も期待されています【4】。

チームプレーにおける効果:連帯感の向上

チームスポーツでは、声援は個々の選手だけでなく、チーム全体の連帯感を高める効果もあります。
試合中にスタジアムが一体となって応援すると、選手たちは「自分たちは一人ではない」という安心感を得ることができ、困難な状況でも諦めずにプレーを続ける力が湧いてきます【3】。

この効果は、特にアウェイゲームなど、敵地での試合の際に顕著です。
たとえ少人数でも、自分たちを応援してくれるファンの存在を感じるだけで、選手は孤独感を和らげ、逆境を乗り越える力を得られるのです。

スポーツ科学の観点:試合結果への影響

応援の効果は、実際に試合の結果にも影響を与えることがあります。
スタジアムが満員の観客で埋め尽くされ、声援が盛り上がると、選手たちは普段以上の力を発揮しやすくなります。
ある研究では、ホームゲームの勝率が高い理由の一つとして、観客の応援が挙げられています【5】。

このように、声援が選手にとってポジティブな刺激となることで、パフォーマンスが向上し、最終的には試合の勝敗を左右することもあるのです。

「ネガティブな応援」の影響

一方で、応援が逆効果となる場合もあります。
たとえば、過剰なプレッシャーを与えるような「期待の重圧」や、ネガティブなヤジなどは、選手にとってストレス要因となり得ます。
応援が選手の集中を乱し、ミスを引き起こす原因にもなるため、適切な応援が重要であることがわかります【6】。

まとめ:応援が選手の力を引き出す理由

結論として、ファンからの声援が選手のパフォーマンスに与える影響は非常に大きいものです。
脳科学、心理学、スポーツ科学の観点から見ると、声援は選手にとってモチベーションを高め、ストレスを軽減し、チームの結束を強める力を持っています。
そのため、選手が最高のパフォーマンスを発揮するためには、ファンの存在が欠かせないのです。

横浜DeNAベイスターズの快進撃の裏側には、ファンからの熱狂的な声援の力も影響していると私は考えます。
アウェー球場での試合ではホーム球場でのパブリックビューイング、ホーム球場での試合はスタジアムは満員、しかも球場の外にも声援を送るファンでいっぱいになっていました。
このような熱狂的な声援が、選手の持つ力を存分に引き出す手助けとなったのです。

しかし一方で、ファンからの声援が選手にとってのパフォーマンス発揮を妨げる要因となってしまうこともあります。
スポーツ界全体で考えると、いまだに選手への誹謗中傷が存在しているのも事実です。

ファンとして声援を送ることは、選手の努力を後押しするだけでなく、共に感動を共有する素晴らしい経験となります。
これからも選手たちの背中を押すようなポジティブな応援を心がけ、一緒にスポーツを楽しんでいきましょう。

私もスポーツメンタルコーチとして選手の活躍を後押しできるようなサポートはもちろんのこと、選手への誹謗中傷がスポーツ界からなくしていく活動も引き続き行っていきたいと思います。

※参考記事
【1】kufs.ac.jp – スポーツ観戦の心理
【2】yahoo.co.jp – サッカーW杯と応援の心理学
【3】jstage.jst.go.jp – 応援傾向尺度の開発とクラスタ分析
【4】ogis-ri.co.jp – 応援は選手のパフォーマンスを高めるのか
【5】real-sports.jp – スポーツ観戦がもたらす健康効果
【6】oceans.tokyo.jp – 「頑張れ」という応援が子供のパフォーマンスに与える影響

スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、結果プロになれずに現役引退。 その後、人命に関われる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロサーファー、プロゴルファー、実業団選手を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にメンタルのサポートをしている。 すべての人が自分自身の可能性を信じて生きていける社会にすることが人生のテーマ。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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