いつでも相談できる存在がいることが目標達成に大切な理由 ~脳科学・心理学・スポーツ科学の視点から~

「一人では限界がある」私たちは何度も耳にするこの言葉には、科学的な根拠がしっかりと裏付けられています。
私がサポートする選手も、一人では限界を感じて訪れてくれる選手が多くいます。

目標を達成するためには、適切なサポートを受けることが不可欠です。
その背景には、脳科学、心理学、そしてスポーツ科学の観点からも多くの知見が蓄積されています。

本コラムでは、なぜ相談できる存在がいることが重要なのかを解説しながら、脳のメカニズムや心理的効果、スポーツ現場での事例に触れていきます。

目次

相談できる存在の必要性

一人では思考の幅が狭くなる

目標に向かって努力を続けていると、どうしても視野が狭くなりがちです。
これは「認知バイアス」と呼ばれる現象で、自分の考えや信念に固執し、新しい情報を取り入れにくくなります。
例えば、過去に上手くいった経験があって、その経験が全てだと思い込み、常にそればかりを追い求めてしまうことも認知バイアスの一つです。

特に大きな挑戦や困難な局面に直面している時ほど、同じ考えを繰り返してしまい、負のスパイラルから抜け出せなくなることが多くあります。
なぜなら上手くいかないときこそ、上手くいった時の経験を頼りたくなる心理が働くからです。

相談相手の存在で視野が広がる

この時、第三者の視点が入ることで、脳の働きが活性化し、新たな発想が生まれることが期待できます。
現に私のスポーツメンタルコーチングでも、目の前の選手が気づいていない本質的な部分に気が付けるようなアプローチを多く取ることがあります。
なぜなら、気がついていなところにこそ、現状を打開するきっかけが潜んでいるからです。

脳科学的に見ても、他者と話すことで前頭前皮質(思考や意思決定を司る部分)が刺激され、柔軟な思考や創造性が引き出されると言われています。
他にも、他人と意見を交わすことで、脳内のドーパミンが分泌され、モチベーションの向上やストレスの軽減にもつながります【1】。

脳科学の観点:他者との対話がもたらす効果

脳は他者とのコミュニケーションによって発達

人間の脳は「社会的な器官」とも呼ばれるほど、他者とのコミュニケーションによって発達してきました。
カナダの神経科学者、ドナルド・ヘッブは「ニューロンは一緒に発火すると結びつく」と述べました。
つまり、他者と会話することで、脳内のニューロンの結びつきが強化され、新しい知識やアイデアの形成が促進されるのです。

信頼できる相談相手の存在がストレスを軽減

ストレスが高まると、脳内のコルチゾール(ストレスホルモン)が増加し、パフォーマンスの低下につながります。
しかし、信頼できる相談相手と話すことで、オキシトシン(愛情ホルモン)が分泌され、コルチゾールの抑制効果が期待できます。
これにより、ストレスから解放され、冷静な判断がしやすくなります【2】。

スポーツ科学から見るメンタルサポートの重要性

アスリートにとってのスポーツメンタルコーチ

多くのトップアスリートがスポーツメンタルコーチをつけているような時代になってきました。
その理由は、単なる技術指導だけではなく、心理的なサポートがパフォーマンスに大きな影響を与えるからです。
特に大きな試合やプレッシャーのかかる場面では、メンタル面の強化が勝敗を分けることもあります。
ハイパフォーマンススポーツセンターの研究でも、心理的支援が選手のパフォーマンス向上に有効であることが示されています【2】。

スポーツメンタルコーチの役割

相談できるスポーツメンタルコーチは、単にアドバイスをするだけではなく、様々なアプローチによって選手を目標達成へと導きます。
目標達成へと導くためにも、選手の思考の幅を広げ、目標達成するに相応しいメンタルを手にするサポートをするのです。

スポーツメンタルコーチは、選手自身の考えを尊重し、選手が主体的に問題解決する力を引き出し目標達成まで導くことが求められます。
だからこそ、スキルがあることは大前提の上、スポーツメンタルコーチとして、「どんな経験をしてきたのか、どんな選手から実際に必要とされているのか、その選手たちは結果を残せているのか」などといった部分を見極めながら自分自身に適したスポーツメンタルコーチを見つけることが大切です。

アドラー心理学が示す「他者の存在」の力

アドラー心理学と自己成長

アドラー心理学では、「人間は社会的な存在であり、他者との関わりの中で成長する」とされています。
他者と協力し、支え合うことで、自己成長と幸福感を得ることができるという考え方です【3】。
これは、単に目標達成だけでなく、人生全般においても当てはまります。

主観の押し付けではなく、視点の広がりを促す

相談相手として理想的なのは、単にアドバイスを押し付けるのではなく、相手の考えを引き出し、新たな視点を提供してくれる人です。

メンタルコーチは、その豊富な経験から得た知識をもとに、クライアントの思考の幅を広げ、新たな気づきを成長に繋げていく役割を果たします。
そうすることで持続的な成長を生み出し、目標達成に向けて寄り添いサポートしていきます。

結論:相談相手を持つことの意義

目標を達成するためには、単なる努力だけでは不十分です。
自分一人では気づけない盲点や、新しい発想を生み出すためには、他者の存在が大きな力となります。
信頼できるスポーツメンタルコーチや相談相手がいることで、思考の幅が広がり、ポジティブな変化が生まれます。
このコラムが、目標を達成するためのサポートとなり、成長を促すための参考になれば幸いです。

※参考資料
Neu Brains – マーケティングにも活用される脳科学とは
日本スポーツ振興センター – 近藤みどり(スポーツ医学研究部門)
今井会計事務所 – 人生が変わるアドラー心理学 全編

スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、結果プロになれずに現役引退。 その後、人命に関われる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロサーファー、プロゴルファー、実業団選手を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にメンタルのサポートをしている。 すべての人が自分自身の可能性を信じて生きていける社会にすることが人生のテーマ。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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