他人と比較してばかりで、自信が持てないときのメンタルのあり方。

「他の選手との比較ばかりしてしまう…」

「比較する度にどんどん自信がなくなってくる…」

「他の選手のいいところばかりが目に入ってくる…」

日々競技と向き合う中で、少しでも成長しようと直向きに頑張っているアスリートはたくさんいるかと思います。

しかし、本来であれば自分がどれだけ成長しているのかという点に目を向けたいはずなのに、つい他人と比較してしまい、劣等感を感じたり、自信を失ったりしてしまうアスリートがいるのも事実としてあります。

「他の選手に比べたら自分なんて…」、「あれもダメだしこれもダメだ…」、「どんどん自分の劣っているところが気になってしまう…」といったように、他人との比較ばかりで、自分自身の成長に向き合うことができなくなってしまった経験はありませんか?

このような状況になっているアスリートは意外と多くいます。

実際に私のもとに来てくれるアスリートからも、“他の選手と自分を比べてばかりで、やる気どころか、自信がどんどんなくなっていく”という相談をされることがあります。

今回は、「他人と比較してしまい、自信が持てない」というアスリートが、少しでも自分の成長に向き合えるきっかけになったらと思い、このコラムを書きます。

目次

他人と比較する度に自信がなくなっていく

「あの選手は自分と違って〇〇が上手い」

「あの選手は周りの人からの評価が高くて羨ましい」

「あの選手は自分より才能があるから」

気づけば、自分の足りていないところばかりが気になってしまい、自信がなくなってしまう。

本気で競技に取り組むからこそ、他人と比べてしまうこともあります。

しかし、他人と比べてしまうことで、自分の成長に向き合えなくなったり、自信を失ったりするケースは多くあります。

皆さんも、他人との比較によって、自分の足りてないところばかりが気になってしまうことはありませんか?

他人と比較することは他人を意識し続けること

最近ではSNSを利用しているアスリートも多く、そのSNSを使うことによって、他人の情報が勝手に入ってきてしまい、無意識に比較してしまうということもあります。

実は、科学的な視点から見ても、他人と比較することで自信をなくしてしまうことが明らかになっているのです。

また、他人と比較するということは、他人を意識し続けることにもなります。

つまり、他人というコントロールできないことを意識し続けることで、本来意識を向けたいコントロールできることが疎かになることもあるのです。

一方で、他人と比べることよりも、自分の成長を感じることで、日に日に自信が高まっていくこともあります。

だからこそ、他人との比較よりも、自分がどれだけ昨日より成長できたのかに目を向けたいです。

もしこのまま、他人と比較し続け、自信がなくなり、自分に成長も感じられない日々が続いたら、どんな競技人生になってしまうでしょうか?

【スポーツメンタルメモ】

  • 心理学者Leon Festingerの社会的比較理論によれば、人は自分の能力や価値を評価するために他人と比較する傾向がある。特に「上方比較」(自分より優れている人と比べる)をすると、自分の不足部分が強調され、劣等感や自信喪失につながることがあります。
    ➡︎上方比較の影響:他人の成功や長所に焦点を当てると、「自分にはこれが足りない」という感情が生まれやすくなる。この結果、自己評価が低下し、自信を失うことがある。
  • 脳の報酬システムは、成功や承認を得ることでドーパミンが分泌され、快感を感じる。しかし、他人と比較して「自分が劣っている」と感じたときは、報酬システムが十分に活性化されず、逆にストレスホルモン(コルチゾール)が増加してしまう。
    ➡︎SNSの影響:ソーシャルメディアでは、他人の「理想化された瞬間」を目にすることが多く、これが脳の報酬システムを乱し、自信を失わせる要因になり得る。
  • 運動心理学者Feltz(1988)の研究によれば、スポーツ選手が練習を通じてスキルを向上させることで、試合での自己効力感が向上することが確認された。練習中の成功体験によって選手の自己効力感を高めることにつながる。

自分自身の成長に目を向ける

他人との比較をすることよりも、「過去の自分に対してどれだけ成長しているか」、「昨日よりもどれだけ成長できたか」といった自分自身の成長を感じられることで、自信は少しずつ高まっていきます。

だからこそ、他人と自分を比較してしまうのではなく、自分自身がどれだけ成長することができたかについて目を向け、日々成長したことに気が付けるかが大切になるのです。

実際に、私がサポートしているアスリートには、「毎日小さな目標を達成する」ことを大切にしてもらっています。

自信は他者との比較によって生み出されるものではなく、これまでの成長によって生み出されるものなのです。

SNSが他人との比較を生み出していたある選手の話

これまで私がお会いしたことのある選手の中で、「他の選手と比較してばかりで、自信が持てなく、自分には無理だと思ってしまう」と悩みんでいる個人競技の実業団選手がいました。

しかし、この選手はもともと自分のプレーに自信を持てていたとのことでした。

さらに比較について話を聴いていくと「SNSでライバル選手の投稿などがタイムラインに流れる度に、自分と比べてしまう」とのことでした。

つまり、この選手は無意識に使っているSNSによって、他人と比較し、自信を失っていたのです。

アスリートの中には、無意識にSNSを開いてしまうという方も多いかと思います。

しかし、その行為によって、他人との比較が自然に生まれている可能性があるのです。

このように他人と比較してしまうきっかけは、日常の中でいたるところに存在します。

比較よりも成長が自信を与えてくれる

他人との比較によって得られるものとは一体どんなものなのでしょうか。

一方で、自分自身の成長を感じられる日々を送ることで、どんな競技人生になっていくでしょうか?

どんなアスリートも実現したい夢や目標に向かって日々競技に取り組んでいることだと思います。

その実現したい夢や目標は、他人との比較によって現実になるのではなく、日々の成長の積み重ねによって現実となるのです。

未来は今この瞬間を積み重ねた先にしかありません。

だからこそ、他人との比較よりも自分自身の成長に目を向けていきましょう。

他人との比較に苦しむことなく、一人でも多くのアスリートが自分自身の成長を感じながら競技人生を描いていけることを願っています。

スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、結果プロになれずに現役引退。 その後、人命に関われる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロサーファー、プロゴルファー、実業団選手を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にメンタルのサポートをしている。 すべての人が自分自身の可能性を信じて生きていける社会にすることが人生のテーマ。
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