「どんなときでも結果がすべて」
「いいプレーできたけど、負けてしまったから」
「とにかく勝つことが大切」
「負けたら絶望」
これらのように、常に勝つことがすべてであり、負けたときは自分を責め、勝ち続けないといけないという気持ちで競技と向き合い続けている、そんな経験はありませんか?
「勝利至上主義」とも言える状態ですが、本当に勝ち負けでしか自分を認められない競技人生は苦しいものです。
実際に、私のもとを訪れてくれる多くのアスリートが、勝ち負けでしか自分自身を評価できずに、試合がある度に一喜一憂してしまうという悩みを抱えています。
しかし、充実した競技人生を送っていくためには、勝ち負けよりもっと大切にしたいことがあります。
それが自分自身の“成長”になります。
これまで勝利至上主義だったアスリートが、自分自身の成長に目を向けたことで、さらに競技人生が豊かになっていく姿をたくさん見てきました。
もし、その勝利至上主義が原因で競技を楽しめなかったり、いいパフォーマンスを発揮することができなくなっていたとしたらいかがでしょうか?
逆に、試合がある度に一喜一憂することなく、自分自身の成長に目を向けられたら、どんな競技人生が待っているでしょうか?
今回は、試合に勝ったか負けたかで自分自身を評価してしまうアスリートが、成長したかどうかを大切にし、より充実した競技人生を歩んでほしいという願いを込めてこのコラムを書きます。
勝ったか負けたかで一喜一憂してしまい、メンタルが安定しない
誰よりも競技に対して熱意があり、実現したい夢や目標に向かって日々努力している選手は多くいます。
一方で、熱意が人一倍だからこそ、勝利を意識し過ぎてしまい、勝ちか負けかでしか自分自身を評価できずにいる選手がいることも事実です。
過程がどんな形であっても、勝ちさえすれば評価できる。
言ってしまえば勝つことが競技をする目的になってしまっている状態です。
しかし、その実現したい夢や目標は、すべての試合に勝ち続けないと実現しないものなのでしょうか?
もちろん、ここ一番の試合では、勝ちにこだわらなければならない瞬間があることも理解しています。
ただ、ここ一番の試合を迎えるまでの過程でさえも、勝たないといけないと思ってしまうのは、本来その過程で得られるものを取りこぼす可能性もあるのです。
勝ち負けかでしか評価できない競技人生
勝ちか負けかでしか自分自身を評価できないことで、取りこぼしてしまうことがあります。
それが成長したかどうかです。
勝っても負けても、その試合を通じて得られた成長があるはずです。
そして、適切な試合の振り返りを行うことで、さらなる成長に繋げることができます。
そのように成長のサイクルを回し続けることが、競技人生を豊かにする上で大切になっていくのです。
ちなみに、脳科学や心理学の視点で考えても成長を感じることでストレスや不安を軽減したり、自己効力感を高められる効果があると言われています。
勝ちか負けかでしか評価できないことで、取りこぼしてしまう成長があるのです。
夢や目標を実現するには成長することが必要なのに、その成長に目を向けられていない。
このような状態で、夢や目標を実現することはできるのでしょうか?
【スポーツメンタルメモ】
- 成長を感じることで脳の報酬システムが活性化され、幸福感をもたらす神経物質(ドーパミンやセロトニン)が分泌され、ストレスや不安を軽減することができる。
- 心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が提唱した「自己効力感(Self-Efficacy)」理論によると、成長を積み重ねていくことで「自分は困難な課題に直面しても乗り越えられる」という自信を高めることに繋がっていく。
勝ち続けようとするから苦しくなる
競技人生の中で、勝ち続けることは簡単なことではありません。
それなのに、勝つことでしか自分自身を評価できない競技人生はとても苦しいことです。
実現したい夢や目標は、成長を積み重ねていった先にあります。
だからこそ、勝つこと以上に成長したかどうかに目を向けることが大切になるのです。
試合がある度に“一喜一憂してしまう”のか、それとも“成長を得られるのか”とでは、どちらが競技人生を豊かにしていくでしょうか?
勝ち負けで一喜一憂し、いつも苦しそうな選手の話
私のもとを訪ねてくれたアスリートで、勝ち続けないといけないという気持ちで競技をしているある実業団選手がいました。
その選手は、いつも試合結果に一喜一憂してしまい、常に不安な気持ちを抱えており、周りの人たちからの評価ばかり気にしていました。
お会いする時間を重ねていくと、その選手はあることを話してくれたのです。
それが、「周りの人たちから試合頑張れ、絶対勝てる」と言われるのが苦しいとのことだったのです。
さらに話を聴いていくと、これまではできなかったことができるようになったり、成長を感じられることに対して喜べていたとのことでした。
それが今では感じられないと。
つまりこの選手は、周囲の人たちからの勝利への期待によって、無意識のうちに勝利することばかりを追い求めるようになってしまったのです。
しかし、周囲の人たちからの勝利への期待にしっかり対応することができたとき、その選手はとてもいきいきとした様子へと変わっていきました。
勝ち続けることよりも成長し続けること
このように、日々競技と向き合い続ける選手は、様々なきっかけによって、勝ち負けでしか自分自身を評価することができなくなってしまいます。
だからこそ、どんな結果だとしても、選手が成長を感じられるような気づきやきっかけを一緒に探す存在が必要になるのです。
そして成長のサイクルを回し続けることによって、選手が実現したい夢や目標に近づいていくのです。
勝ち負けにこだわってしまう原因を見つけることから
心の底では勝つことがすべてと思っているのにも関わらず、成長を意識し続けるというのは、選手にとって簡単なことではありません。
言ってしまえば、嫌いなことを無理してやり続けているようなものです。
勝ち負けでしか自分自身を評価できなくなってしまう理由は、選手によって違ってきます。
だからこそ、どうして勝ち負けでしか自分自身を評価できなくなってしまったのか、根本にある原因やそうなってしまったきっかけを見つけることが大切になります。
私が行なっているスポーツメンタルコーチングでは、アスリート自身が思い悩んでいることが、どんなきっかけで悩みへと変わってしまったのか、根本的な原因を特定し、改善していくことを大切にしています。
メンタルが変化することで、自然と行動も変化していきます。
もし勝ち負けでしか自分自身を評価できずに苦しんでいるのなら、是非一度体験メンタルコーチングを受けてみてください。