試合後の振り返りで、成長するゴールキーパーがやっていること

試合のあと、頭の中が落ち着かない日があります。
あそこで止めていれば。
なんで出なかったんだろう。
悔しさが残るほど、振り返りは濃くなります。

でも、振り返りが濃くなるほど、次の日が重くなることもあります。
振り返ったつもりなのに、心は次に向かっていない。
同じ場面だけが何度も再生されて、眠る直前まで心が締め付けられる。

ゴールキーパーは、たった一つの判断がそのまま失点になります。
フィールドの選手みたいに、次のプレーで取り返すことが難しい。
だからこそ試合のあと、心が試合の中に置き去りになりやすいです。

そしてこれは、気合や根性の問題ではありません。
才能よりも、振り返りの順番で起きています。

成長するGKが試合後に最初にやっていることは、原因探しでも、気持ちの整理でもありません。
まず、事実を置きます。
それだけです。

ちなみに、私自身もGKでした。
だから、失点後のあの孤独さや、映像を見返すたびに心が締め付けられる感覚が、よく分かります。

1)最初にやるのは、事実を置くことです

事実は、映像のように言えるものです。

  • 何分、スコア、局面(ビルドアップ、カウンター、セットプレー)
  • ボールの位置とスピード、味方DFの立ち位置、背後のスペース
  • 自分のポジショニング、構え、視線
  • 何を見て、何を優先して、何を選んだか
  • 結果として、触れたか、弾いた方向はどこか、セカンドプレーはどうなったか

ここに良い/悪いは一旦置いておきます。
評価が入った瞬間、振り返りはプレーの話から、自分の価値の話に飛びやすいからです。

たとえば、終盤のクロスから失点した場面を振り返るとします。
頭の中には、こんな言葉が出てきます。

大事なところで弱い。
怖がって出られない。
また同じミスをした。

こう思ってしまうのは自然です。
ただ、それは判断です。

事実から始めると、景色が変わります。

右サイド深い位置からクロス。
自分はペナルティスポット付近の相手選手を先に見た。
ボールの落下地点の確認が遅れた。
ポジショニングはゴールライン上。
一歩目が遅れて、ファーで合わせられた。

ここまでが事実です。
この時点では自分を責めていません。事実を客観的に確認しただけです。

事実を客観視できると、試合が出来事として切り分けられます。
心が少し静かになります。
次に進むための土台ができます。

GKの振り返りで特に大事なのは、意図と結果を分けることです。
相手選手を見た意図があった。結果としてボール確認が遅れた。
出るつもりはあった。結果として判断が一瞬遅れた。
この分け方ができるほど、振り返りは前に進みます。

2)次に、判断を分けます

事実の次に来るのが判断です。

怖かった。
迷った。
出るべきだった。
止められるはずだった。

判断が悪いわけではありません。
ただ、判断を事実として抱えると、振り返りは重くなります。

ここでやることは一つです。
判断を分けて、眺めます。

いま、自分は怖かったと解釈しているんだな。
いま、自分は出るべきだったと思っているんだな。
この距離があるだけで、反芻になりにくくなります。

GKが自分をジャッジしやすい3つの瞬間

ここ、当てはまる人は多いです。
そして、当てはまるほど試合後に頭の中が落ち着かなくなります。

1)失点直後、味方の視線を感じた瞬間

失点した直後、誰かがあなたを見る。
声が飛んでくる。あるいは、誰も何も言わない。
その一瞬で、心がこう反応します。

自分のせいだ。
取り返せない。
次もやるかもしれない。

ここで起きているのは、事実ではなく解釈です。
この解釈が強いほど、その後のプレーは小さくなります。
声が減り、ポジショニングが下がり、判断が遅れます。

2)クロスの一歩目が出なかった瞬間

クロス対応は、結果が分かりやすいです。
出れば触れたか触れないかが残る。
出なければ、出ればよかったかもしれないという後悔が残る。

そしてGKは、ここで自分をジャッジしやすいです。

出られないGKだ。
怖がっている。
自分は勝負に弱い。

でも多くの場合、原因は性格ではなく手順のズレです。
視線がボールに戻れていない。
重心が踵に乗っている。
ポジショニングが深くて一歩目が出にくい。
判断が遅れたのではなく、判断できる材料が揃っていない。
ここを事実に戻せるほど、次は変わります。

3)弾いたあと、セカンドプレーでやられた瞬間

止めたのに失点する。
触ったのに勝てない。
GKにとって、これほど心が締め付けられるものはありません。

その瞬間、心はこう言います。

自分のプレーは意味がない。
結局失点する。
大事なところで足りない。

でも、ここも事実に戻せます。
弾いた方向はどうだったか。
中央に残っていないか。
味方への声は出せていたか。
ポジショニングは次のプレーに移れる形だったか。
セカンドプレーは、GK一人では完結しない場面も多いです。
それでも、自分が次にできる一つは必ず見つかります。

判断を分けたら、事実に戻ります

もしこれを読んで、自分のことかもしれないと思ったなら、こんなサインが出ているかもしれません。

  • 失点後、しばらく声が出なくなる
  • クロスの場面で、迷って出られなくなる
  • 裏を取られるのが怖くて、ポジショニングが下がる
  • 味方に伝える言葉が短くなり、タイミングも遅れる
  • 試合後、映像を見返すほど自信が失われていく

これは意志の弱さではありません。
情報処理が追いつかない状態で、自分をジャッジしてしまっているだけです。

判断を分けられたら、次はまた事実に戻ります。
GKの場合、戻る場所は身体と情報処理です。

  • クロスが上がる瞬間、視線はボールに戻れていたか
  • ポジショニングは近すぎたか、深すぎたか
  • 一歩目が出る準備はできていたか(重心が踵に乗っていないか)
  • 体の向きは、ゴールとボールを同時に扱える角度だったか
  • 声は出ていたか(誰に、何を、いつ伝えたか)
  • 弾いた方向はどうだったか(中央に残していないか)

ここまで来ると、振り返りは精神論ではなく、再現できる話になります。
次に繋げる入口が具体になります。

3)最後に、次に繋げるアクションを一つだけ決めます

試合後は直したいことが山ほど出ます。
ポジショニング、クロス対応、1対1、シュートストップ、セカンドプレー、コーチング、ビルドアップ。
全部やろうとすると、結局どれも薄くなります。

だから、次に繋げるアクションは一つでいいです。
そして、必ず行動で書ける形にします。

クロスの例なら、こう決められます。

  • クロスが上がる瞬間は、相手選手を見る前に一度ボールに視線を戻します
  • ポジショニングは相手の利き足と位置によって判断します
  • 一歩目を速くするために、母指球と小指球に重心を置きます

シュートストップでも同じです。止められるはずだった、で終わらせません。

  • 相手が振りかぶる直前に、肩の力を抜いてパワーポジションを作ります
  • プレジャンプ後の着地のとき、両足を同時につけます
  • 近い距離は、手を出す前に体を残して面を作ります

ポイントは、気合ではなく手順になっていることです。
そのアクションが手順になると、振り返りはその瞬間に次へ向かい始めます。

振り返りが前に進まない理由と、メンタルコーチができること

GKは、技術と同じくらい判断の質でプレーが変わります。
そして判断の質は、心の状態に強く左右されます。

怖さを消す必要はありません。
ただ、迷ったときに戻れる合図があるかどうか。
自分の中に戻り方の手順があるかどうか。
そこが成長のスピードを決めます。

メンタルコーチングで扱うのは、気持ちを前向きにすることだけではありません。
試合の中で何が起きたかを事実として整理し、判断を切り分け、次に繋げるアクションを作り、次の試合で再現できる形に落とします。

一人だと、どうしても事実の前に評価が入りやすいです。
止められなかった自分、という物語が先に立ってしまう。
そこに外から整理の視点が入ると、事実に戻るスピードが上がります。

迷った瞬間の呼吸、視線、ポジショニング、声の出し方を一緒に見つけて、合図を作って、次の試合で試すところまで組み立てられます。

今日から使える小さなワーク

状況:何分 スコア 局面
事実:ボール位置 相手の選択 自分のポジショニング 視線 一歩目
判断:いま自分がどう解釈しているか
次のアクション:行動で一つだけ

次のアクションが一つ決まったら、振り返りは終わりです。
それ以上は、だいたい反芻になります。

うまくいかなかった日ほど、事実から始めてください。
それだけで、心は少しずつ次に向かっていきます。


GKの振り返りは、やり方次第で今後の成長に繋がります。
ただ、やり方を間違えると、振り返りそのものが自信を失わせていきます。

もし、試合後に頭の中が落ち着かない時間が長いなら。
もし、同じ場面が何度も再生されて、次の試合が怖くなるなら。

その状態から抜けるための手順を、無料メールセミナーにまとめました。
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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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