燃え尽きた、心がついてこない、そんな状況にいるアスリートへ

競技を初めて嫌いになった日

大学4年生の春、初めて心の底からサッカーをしたくないと思いました。

ボールにも触れたくない。
グラウンドに行くことすら苦しい。
身体は動くのに、心だけがついてこない。

小さい頃からプロサッカー選手を目指してきた私にとって、それは今まで感じたことのない感覚でした。
サッカーのために生活があり、サッカーのために努力があり、サッカーのために我慢してきた。

だからこそ、競技をやりたくないと思う自分を、なかなか受け入れられませんでした。

もっと頑張らないといけない。
ここで止まったら終わりだ。
こんな自分ではダメだ。

そうやって自分を前に進めようとし続けていましたが、あの頃の私は、すでに限界を超えていたのだと思います。

燃え尽きるのは、弱いからではない

燃え尽きるのは、弱いからではありません。
むしろ、本気でやってきた人ほど燃え尽きやすいです。

高い目標を持ち、期待を背負い、良いときも悪いときも真剣に競技と向き合ってきた人ほど、心の余力を使い切りやすい。
真面目で、責任感が強く、手を抜けない人ほど、限界の兆候に気づかないまま走り続けてしまいます。

だからまず伝えたいのは、今の苦しさを弱さとして決めつけないでほしいということです。

それは本気で向き合ってきた証拠です。
それだけ競技人生を大切にしてきた証拠です。

ただ、その本気の向け方が、いつの間にか自分を追い詰める方向に偏ってしまうことがあります。
頑張れる自分でいようとするほど苦しくなる。ちゃんとやっている自分を守ろうとするほどしんどくなる。

燃え尽きるという感覚は、こういう形で深くなっていきます。

心がついてこないとき、何が起きているのか

心がついてこないとき、多くの選手は自分に厳しい言葉を向けます。

やる気がないだけだ。
甘えているだけだ。
もっとやれるはずだ。

でも、本当に起きていることは少し違う場合が多いです。

多くは、意志の問題というより、状態の問題です。

頭ではやらなければと思っている。
でも心と身体は、これ以上は危ないと反応している。
このズレが大きくなると、練習に向かうだけで疲れる、試合が近づくほど気持ちが重くなる、休んでも回復した感じがしない、という反応が起きやすくなります。

ここで気合いを入れると、一時的には動けます。
でも土台の状態が整っていないので反動が大きくなりやすく、また動けなくなって、さらに自分を責める。
この流れに入ると、苦しさは長引きやすくなります。

考え続けるほど、苦しくなる理由

苦しい状態では、頭の中で考えることが固定化しやすくなります。

視野が狭くなると、過去の失敗や未来の不安に意識が引っ張られやすくなり、答えの出ない問いを何度も繰り返す「反芻思考」に入りやすくなります。

なぜ自分はこんなに頑張れないのか。
あのとき違う選択をしていたら。
このまま競技を続ける意味があるのか。

同じ問いが、頭の中をぐるぐる回り続ける感覚です。

真面目な選手ほど、この反芻思考こそが競技と本気で向き合っている証拠だと思って続けてしまいます。
でも実際には、考える量が増えるほど整理は進まず、苦しさだけが積み上がっていくことが多いです。

だから必要なのは、精神論で前に進もうとすることではなく、今の自分に何が起きているかを整理することです。

どこで消耗することが増えたのか。
何に強く反応しているのか。
どんな前提が自分を追い詰めているのか。

ここが少しずつ見えてくると、初めてやるべき方向が明確になります。

私自身が、二度燃え尽きた

私は6歳から22歳まで、プロサッカー選手を目指してきました。

でも大学4年のとき、気持ちが切れました。あれだけ好きだったサッカーを、嫌いになってやめました。

その後、消防士になりました。人命に関わる仕事に意味を感じて、前に進めたと思っていました。

でも消防の世界でも、気づけば同じことが起きていました。
使命感で動き続けるうちに、自分が何のために働いているのかが見えなくなっていく。
ある時期から精神的な疲れが抜けなくなり、最終的に退職しました。

二度、燃え尽きた経験があります。

遠回りに見えるかもしれません。
でも今は、この時間が必要だったと思っています。

この経験があったからこそ、頑張れない人の気持ちを知識ではなく体感として理解できる。
その後、自分がなぜ燃え尽きたのかをあらためて学び直しました。
脳と心の仕組み、スポーツ科学の知見、身体との関係を学び、選手を支える立場で競技の世界に戻ってきました。

だから私は、今しんどさの中にいる選手に、簡単に頑張れとは言いません。
その言葉が届かない状態があることを、自分の経験として知っているからです。

整えるとは、前に進む準備をすること

燃え尽きているとき、周りの選手は前に進んでいるように見えます。
チームメイトも、ライバルも、SNSの中の選手も、ちゃんとしているように見える。

そのギャップが焦りになり、焦りが「何かしなければ」という衝動につながります。
でも、その焦りを動機に頑張ろうとすると、さらに苦しくなります。

こういう時期に一番大事なのは、無理に前進することではありません。
今の自分を理解することです。

本当は何がしんどいのか。
どこで無理が積み重なったのか。
何を守ろうとして苦しくなったのか。

ここを丁寧に見ていくことが、再生のスタートになります。

立ち止まることは後退ではありません。
整えるための時間です。

むしろ、ここを飛ばして走り出すと、同じ場所でまた苦しくなりやすい。
形を変えて再発することもあります。

燃え尽きには、燃え尽きる仕組みがある

燃え尽きた選手と話すとき、私がいつも感じることがあります。

その選手は、いい加減に競技と向き合ってきたわけではありません。
むしろ逆です。
真面目に、誠実に、自分が正しいと思うことを一生懸命やってきた。

だからこそ、こういう問いが浮かびやすいです。

なぜ、あれだけ頑張ったのに、こうなってしまったのか。
自分が弱かったのか。努力が足りなかったのか。

でも私は、そこに答えを探す必要はないと思っています。

燃え尽きるのは、誰かのせいでも、自分のせいでもありません。
そうなってしまう仕組みがあったということです。

競技に真剣に向き合うほど、こういった前提が積み重なっていきます。

弱さを見せてはいけない。
休むことは怠けることだ。
もっとやれるはずだ。

それ自体が悪いわけではありません。
強い信念があるから、苦しいときも動けた。
でもその前提が変わらない限り、行動のパターンも変わりません。

しんどくても誰にも言えない。
限界を超えても止まれない。
身体の反応を無視して動き続けてしまう。

こうした思い込みは、本人にはなかなか見えません。
なぜなら、自分が「当たり前」だと思っていることだからです。
水の中にいる魚が、水の存在に気づかないように、自分の思考の枠の中にいる限り、その枠の存在には気づきにくい。

だから仮に今の苦しさを何とか乗り越えたとしても、この枠が変わらなければ、また同じような状況になりやすいです。
場所が変わっても、形を変えて繰り返すことがあります。

私がメンタルコーチングでやっていることの一つは、この思い込みの枠に気づき、広げていくことです。
責めるためではなく、仕組みを見るためです。

「こうすべきだ」という前提はどこから来たのか。
その前提は今の競技人生に本当に合っているのか。
それとも、いつの間にか自分を縛るものになっていないか。

こうした問いを一緒に整理していくことで、同じ練習でも、同じ試合でも、受け取り方が変わることがあります。
燃え尽きた自分を責める必要はありません。
そうなってしまう仕組みがあったということを、まず理解することが出発点になります。

一人で抱え込まなくていい

向き合うのは自分です。
でも、整理は一人でやらなくていい。

しんどい時期ほど、一人で考えると同じことばかり考えてしまいます。
真面目な選手ほど、答えを出そうとして考えすぎます。そして答えが出ないことで、さらに自分を責めてしまう。

でも実は、答えが出ない理由は考える量が足りないからではありません。

自分一人では、自分の思考の枠の外側には出られないからです。

さきほど「燃え尽きには仕組みがある」という話をしました。
その仕組みをつくっているのは、本人が「当たり前」だと思っている前提です。
当たり前だと思っているから、そこに問いを立てられない。
問いを立てられないから、いくら考えても同じところをぐるぐるしてしまう。

だからこそ、自分とは違う視点が必要になります。

責めるためではなく、見えていなかったものを一緒に見るために。

自分の外側に出るのは、一人ではとても難しいことです。
それは意志や努力の問題ではなく、構造上そうなっているということです。
どれだけ真剣に自分と向き合ってきた選手でも、自分の思考の枠の存在には気づきにくい。
むしろ真剣であるほど、その枠の中で深く考え続けてしまいやすいです。

燃え尽きた経験は、私自身にもあります。
だからこそ、その苦しさの中にいる選手の気持ちを、知識としてではなく体感として理解できるつもりでいます。

今は何も整理できていないのも、言葉にならないのも当然です。

ただひとつだけ伝えたいのは、一人で抱え込まないでほしいということです。

自分の思考の枠の中にいる限り、その枠には気づけません。
それは弱さではなく、そういう仕組みになっているということです。
だからこそ、誰かと話し、思考の枠を広げることが必要になってきます。

私の体験してきたことや、これまで多くの選手たちと関わってきた経験が、あなたの現状を変えていくためのきっかけとなったら嬉しく思います。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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