環境に左右されることはあっても、
成長の余地まで失われるわけではない。
私は、そう思っています。
もちろん、環境の影響は小さくありません。
周囲の言葉。
指導者の関わり方。
挑戦したときに、それを受け止めてもらえる空気があるかどうか。
そうしたものは、私たちの行動や伸び方に現実的な影響を与えます。
実際、能力は伸ばせると伝えることも、いつでも誰にでも同じように力になるわけではなく、周囲の支えや環境によって結果は変わります。
だから、環境の厳しさを軽く見たいわけではありません。
恵まれた環境のほうが、伸びやすい。
それは、たしかに一つの事実です。
ただ一方で、成長を本当に止めてしまうものがあります。
それは、環境そのものだけではなく、
「できない」
「わからない」
「無理だ」
と、自分の中で決めつけてしまうことです。
心理学では、自分の行動では結果を変えられないと感じる状態が続くと、人は動きにくくなりやすいことが長く研究されてきました。
いわゆる、学習性無力感です。
大事なのは、能力が本当になかったから止まるのではなく、
「やっても変わらない」と感じたときに、試行錯誤そのものが止まりやすいということです。
成長は、才能があるかどうかより前に、
試すこと。
改善すること。
続けること。
その積み重ねの中で起こります。
だからこそ、
「今はまだできない」
と捉えるのと、
「自分には無理だ」
と決めるのとでは、大きな違いがあります。
前者には、次があります。
後者には、次がなくなります。
もちろん、前向きに考えれば何でもうまくいく、という話ではありません。
能力は伸ばせるという捉え方に関する研究でも、いつでも誰にでも、大きな効果が出るわけではないことが示されています。
複数の研究をまとめて見た近年の分析でも、効果の出方にはばらつきがあり、どんな人に、どんな条件で働くのかを丁寧に見る必要があるとされています。
でも一方で、だから無意味だとも言い切れません。
まだ足りない部分はある。
でも、成長できるかもしれない。
やる意味はあるかもしれない。
そう感じられることが、挑戦や粘り強さを支えることがあります。
スポーツの文脈でも、自分はやれるという感覚とパフォーマンスには、一定の関連があることが、これまでの研究をまとめた分析でも示されています。
これは、自信さえ持てば勝てる、という意味ではありません。
現実を無視して、自分を大きく見せることでもありません。
そうではなく、
まだ足りない部分はある。
でも、成長できるし、やる意味はある。
そう感じられることが、挑戦や粘り強さを支えやすい、ということです。
だから私は、
環境のせいにするな、
と言いたいわけではありません。
厳しい環境なら、苦しくて当然です。
うまくいかない日があって当然です。
成長しづらい時期も、たしかにあります。
でも、そこで
「この環境では何をやっても無理だ」
と、自分の中で可能性を閉じてしまうこと。
それが、環境の厳しさ以上に、成長を止めてしまうことに繋がってしまいます。
成長とは、最初から恵まれた人だけのものではありません。
うまくいかない状況の中でも、
問い続けること。
試し続けること。
改善し続けること。
その積み重ねの中で、少しずつ起こっていくものです。
できない。
わからない。
無理だ。
そう感じる瞬間があるのは自然です。
でも、その感情を結論にしないことです。
成長が止まるのは、
できないと感じた瞬間ではありません。
できないままの自分を、そこで確定させた瞬間です。
参考文献
- Maier, S. F., & Seligman, M. E. P. (2016). Learned Helplessness at Fifty: Insights from Neuroscience.
- Burnette, J. L. et al. (2023). A systematic review and meta-analysis of growth mindset interventions: For whom, how, and why might such interventions work?
- Tipton, E. et al. (2023). Why Meta-Analyses of Growth Mindset and Other Interventions Must Better Account for Heterogeneity.
- Moritz, S. E., Feltz, D. L., Fahrbach, K. R., & Mack, D. E. (2000). The relation of self-efficacy measures to sport performance: A meta-analytic review.

