選手と指導者のミスコミュニケーション|言葉のズレが成長を止める理由

競技に向き合っていると、「やっていることは間違っていないはずなのに、どこか噛み合わない」と感じる瞬間があります。

言われたことに対してしっかり向き合っている。
自分なりに考えて、行動にも移している。

それでも、思ったように前に進んでいる感覚が持てない。

こういうとき、技術や身体の問題として捉えられることが多いですが、実はその手前にある「コミュニケーションのズレ」が影響していることも少なくありません。

日々いろんなアスリートと関わる中で感じるのは、選手が抱えている迷いや苦しさの背景に、指導者とのミスコミュニケーションが潜んでいるケースがあるということです。

指導者は良かれと思って伝えている。
選手も真剣に受け取っている。

それなのに、なぜか方向がずれていく。

この小さなズレが積み重なることで、本来進みたかった方向とは違うところに進んでしまうことがあります。

「もっと」という言葉の中身

例えば、指導者からこんなフィードバックを受けたとします。

「もっといこう」

よくある言葉ですし、その場ではなんとなく理解した気になります。

でも、この「もっと」という言葉の中身は、人によってまったく違います。

ある指導者にとっての「もっと」は、
プレーのスピードを上げることかもしれないし、
判断の回数を増やすことかもしれない。

一方で選手は、
思い切ってプレーすることだと受け取るかもしれないし、
ミスを恐れずにチャレンジすることだと捉えるかもしれない。

同じ言葉を使っているのに、頭の中で思い描いているものが違う。

この状態のまま進んでいくと、何が起こるか。

選手は「言われたことをやっている感覚」がある。
でも指導者からすると「変化が見えない」と感じる。

ここにズレが生まれます。

そしてこのズレは、時間が経つほどに大きくなっていきます。

抽象的な言葉ほど、ズレやすい

これは「もっと」に限った話ではありません。

  • 強くいく
  • 楽しむ
  • 思いっきりやる
  • 落ち着く

こういった言葉は、どれもよく使われるものです。

ただ、これらはすべて抽象的です。

抽象的な言葉は便利です。

短く伝えられるし、その場の空気にも合いやすい。

でもその分、「受け取り方の幅」が大きい。

例えば「楽しむ」と言われたときに、
ある人はリラックスすることをイメージするし、
ある人は積極的にプレーすることをイメージする。

どちらも間違いではないけれど、意図とズレていれば、結果として取り組む方向も変わってしまいます。

しかも厄介なのは、そのズレに気づかないまま進んでしまうことです。

悪意がないからこそ起きる

ミスコミュニケーションは、誰かが悪いから起きるわけではありません。

むしろ多くの場合、悪意はまったくありません。

指導者は何気なく伝えたつもりでも、
選手にとっては強い言葉として残ることがある。

逆に選手は、自分の考えを素直に伝えたつもりでも、
指導者からすると違う意味で受け取られてしまうこともある。

この「認識のズレ」が積み重なると、

指導者は「意図が伝わらない」と感じ、
選手は「理解してもらえない」と感じるようになります。

本来は同じ方向を向いているはずなのに、少しずつ距離が生まれてしまう。

この状態になると、プレー以前の部分でエネルギーを使うことになります。

方向がずれると、積み上がらない

取り組みの質は、「何をやるか」だけで決まるわけではありません。

その取り組みを、どう理解しているかによって大きく変わります。

同じ練習をしていても、
意図を共有した上で取り組んでいる場合と、
それぞれが違うイメージを持ったまま取り組んでいる場合では、
積み上がり方はまったく違います。

方向が揃っていない状態では、どれだけ時間を使っても、思ったように積み上がっていかない。

むしろ、「やっているのに手応えがない」という感覚につながりやすくなります。

質の高いコミュニケーションとは何か

では、このズレをどうやって減らしていくか。

大切なのは、「言葉をそのまま受け取らないこと」です。

もう少し正確に言うと、
言葉の意味を、お互いの中で揃えることです。

例えば、
「それってどういう状態ですか?」
「具体的にどんなプレーをイメージしていますか?」
と一歩踏み込んで確認する。

指導者側も、
「この場面でこういう選択ができる状態」
「このくらいのテンポや距離感」
といったように、できるだけ具体的に伝える。

抽象的な言葉を使うこと自体が問題なのではなく、
そのまま曖昧にしてしまうことが問題です。

すり合わせが、迷いを減らす

コミュニケーションの質が上がると、まず変わるのは「迷いの量」です。

自分がどこに向かっているのかが明確になることで、余計な不安や疑問が減っていきます。

「これでいいのかな」と考え続ける時間が減ることで、プレーそのものに集中しやすくなる。

また指導者にとっても、選手の変化を捉えやすくなります。

意図が共有されていれば、「どこが合っていて、どこがズレているのか」が見えやすくなるからです。

その結果、次のフィードバックもより具体的になり、コミュニケーションの精度がさらに上がっていきます。

小さな確認が、大きなズレを防ぐ

ミスコミュニケーションは、ほんの小さなすれ違いから始まります。

だからこそ、

  • 分かったつもりで進まない
  • 自分の解釈だけで完結させない
  • 一度言葉にして確認する

こういった小さな積み重ねが大切になります。

一見すると遠回りに感じるかもしれませんが、結果的にはこのプロセスが一番無駄が少ない。

方向が揃っている状態で取り組むことが、何よりも大きな土台になります。

最後に

ミスコミュニケーションは目に見えません。

だからこそ気づきにくく、後から振り返って初めて「あのときズレていたな」と感じることも多いものです。

でも、そのズレは確実に積み重なります。

取り組む方向を少しずつ変え、気づいたときには大きな差になっていることもある。

だからこそ、
「この言葉は、同じ意味で共有できているか」
この視点を持つことが大切です。

コミュニケーションの質が変われば、取り組みの質が変わる。

取り組みの質が変われば、見えてくる景色も変わっていく。

ほんの少しのすり合わせが、その先の大きな差につながっていきます。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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