うまくやろうとするほど、身体が動かなくなるのはなぜか

うまくやりたい。
失敗したくない。
ちゃんと力を出したい。

そう思うのは、とても自然なことです。
むしろ、それだけ真剣に競技に向き合っている証拠でもあると思います。

でも実際には、うまくやろうとする気持ちが強いときほど、身体がかたくなったり、動きがぎこちなくなったり、いつも通りのプレーが出なくなることがあります。

たとえば、全力で走ろうとするとき。
股関節の角度、腕の振りの高さ、足の裏のどこで接地するか、上体の傾きはどうか。そんなふうに一つひとつを意識し始めると、逆に走れなくなることがあります。

少し不自然になる、というより、そもそも全力を出せなくなる。
そんな感覚を持ったことがある選手も多いのではないでしょうか。

これは、根性が足りないという精神論ではありません。
身体の使い方をわかっていないからでもありません。

人は、意識して同時に扱えることが、もともとそんなに多くありません。
だから本番で細かいことをたくさん管理しようとすると、それだけで頭の中がいっぱいになりやすいのです。

本来、身体はもっと複雑なことを、無意識の中で自然に統合しながら動いています。
タイミング、バランス、反応、力の出し方、修正の速さ。
そうしたものは、一つひとつを言葉で確認しながら動かしているわけではありません。

これまで積み重ねてきた練習や感覚が、水面下でつながって働いているからこそ、人は自然に動くことができます。

だから、パフォーマンスは「意識できる部分」だけでできているわけではありません。
むしろ大きな部分は、自分でもうまく説明できない感覚や、積み重ねの中で身についてきた無意識の反応に支えられています。

人のパフォーマンスは、意識できる部分だけで成り立っているわけではなく、その多くは水面下の無意識の働きに支えられています。

パフォーマンスの大部分は、水面上の「意識できること」だけでなく、水面下の「無意識の感覚・反応・積み重ね」に支えられている。

ここで、氷山の図を思い浮かべてみてください。
水面の上に出ている部分は、自分で意識できること、言葉にできること、今コントロールしようとしていることです。
一方で、水面の下にある大きな部分は、無意識の感覚、反応、習慣、経験の蓄積です。
実際のパフォーマンスは、その水面下の大きな土台に支えられています。

研究でも、動きそのものを細かく意識しすぎるより、プレーの目的や結果のほうに意識が向いているときのほうが、動きが自然にまとまりやすいことが示されています。

たとえば、
「腕をこう振ろう」
「股関節をこう使おう」
「足の裏はここで接地しよう」
と考え続けるよりも、

「前に進む」
「相手より先に触る」
「このリズムで入る」

といった、動きの結果や目的に近いところへ意識を置いたほうが、身体は動きやすいことがあります。

もちろん、フォームを見直す練習がいらないということではありません。
技術を身につける過程では、細かく意識して学ぶ時間も必要です。

でも、その感覚を本番まで持ち込みすぎると、かえって身体は自由さを失ってしまうことがあります。

プレッシャーがかかる場面で、急に身体が動かなくなることがあります。
あれも、ただ緊張しているからというより、普段は自然にできていたことを、あらためて意識で操作しようとしすぎていることが、一つの理由なのかもしれません。

うまくやろう。
失敗しないようにしよう。
ちゃんとやろう。

その思いが強くなるほど、身体に任せられなくなってしまう。
すると、本来つながっていた動きが分かれてしまい、反応が遅れたり、力が抜けなくなったり、出せるはずのものが出なくなったりします。

だから、うまくやろうとすること自体が悪いわけではありません。
問題なのは、うまくやろうとして、必要以上に自分の身体を細かくコントロールしようとすることです。

本番で大切なのは、全部を意識で管理することではなく、今この場面で本当に必要なことに意識を絞ることです。

ひとつの合図でもいい。
ひとつのリズムでもいい。
ひとつの狙いでもいい。

意識は、増やすことより、減らすことのほうが助けになる場面があります。

身体がかたくなっているとき。
プレーが小さくなっているとき。
頭の中が忙しくなっているとき。

そのとき必要なのは、さらに細かく修正することではないのかもしれません。

少しだけ、任せてみる。
積み重ねてきたものを、信じてみる。
全部を自分で動かそうとするのではなく、動ける状態に戻っていく。

それだけで、身体がふっとほどけることがあります。

本来の力は、すべてをコントロールできたときに出るとは限りません。
むしろ、必要以上にコントロールしようとしなくなったときに、出てくることがあります。

うまくやろうとして動けなくなっているときこそ、問い直してみてもいいのだと思います。

自分はいま、何を増やしすぎているだろう。
何を意識しすぎているだろう。
そして、本当に向けるべき意識は何だろう。

身体は、支配されたときよりも、働ける余白があるときのほうが、力を発揮しやすい。
競技の中では、そんなことが少なくないように思います。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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