苦手な選手を克服するためのスポーツメンタル

「あの選手とは試合したくないんだよな…」

「あの選手は苦手…」

「これまで負け越してるし…」

このように苦手な選手に対して、ネガティブな気持ちを抱いてしまうアスリートも少なくないかと思います。

それこそ、苦手な選手と行った試合が負け越していたり、自分のプレーをなかなか発揮できなかったりすると、より一層苦手意識が強くなってしまう、そんな経験をしたことがあるアスリートもいるのではないでしょうか?

しかし、捉え方を変えれば、そのような苦手意識を克服することで、さらに競技者としてさらに成長できると思いますし、もっと強い選手になれるチャンスでもあります。

その一方で、苦手意識を克服するどころか、日に日にその苦手意意識が強くなってしまうという問題に直面しているアスリートもいることでしょう。

ではどうして、苦手意識を克服したいのに、思うように克服できないのでしょうか。

今回は苦手意識が日に日に強くなってしまう理由とその乗り越え方についてコラムを書きます。

このコラムを通じて、本気で競技に取り組むアスリートのメンタルに、少しでも力になれたら嬉しく思います。

目次

できればこの選手とは試合したくない

「大事な試合で、対戦相手がまさかの苦手な選手。」

「これを勝てば優勝という状況で、対戦相手は苦手な選手。」

「スカウトがたくさん見に来てくれてる中で、対戦相手が苦手な選手。」

もし皆さんがこのような状況になってしまったらどんな気持ちになるでしょうか?

「最悪だ…」、「うわっ…」、「やばいな…」そんな心の声が漏れてしまうかもしれません。

このコラムを読んでいる方の中には、つい最近その状況経験したという方もいることでしょう。

実際に、そのような感情で試合をしてしまえば、自分らしいプレーもできずに気づいたら試合が終わっていたということにもなりかねません。

苦手な選手だと決めつけてしまっている

そもそも、どうして対戦相手を苦手な選手だと思い込んでしまうのでしょうか。

「これまで負けてばかりだから…」、「自分のプレーを発揮させてもらえないから」などと言ったように、過去の経験を通じて、苦手な選手であると思い込んでしまうことが多いかと思います。

実際に科学的な視点から見ても、苦手な選手と一度決めてしまうことで、徐々にその思い込みを強めてしまうことが言えます。

つまり、一度苦手な選手だと決めてしまうと、その思い込みは日に日に強くなってしまうのです。

だからこそ、人間にはそのような特性があることを理解した上で対処していく必要があるのです。

【スポーツメンタルメモ:苦手な選手と思ってしまうことに関する科学的根拠】

  • ラベリング理論:社会的に与えられたラベル(レッテル)が、個人や集団の自己認識や他者からの認識、さらには行動にまで影響を及ぼすという理論。この理論は主に犯罪学において、犯罪者や逸脱行動をした人々が社会から「逸脱者」としてラベリングされることで、実際にそのラベルに沿った行動を強化してしまう現象を説明するために発展した。
  • 確証バイアス:自分がすでに信じていることを裏付ける情報ばかりを探し、それに反する情報を無視してしまう認知バイアスの一つ。例えば、「あの人は不真面目だ」と決めつけた場合、不真面目に見える行動を過剰に強調して捉え、逆に誠実な行動は軽視してしまうことがある。
  • 記憶の再構成:記憶は固定されたものではなく、思い出すたびに再構成される。つまり、自分が決めつけてしまっている情報を何度も思い出すと、脳内でその情報が「事実」として固定されやすくなる。逆に、決めつけていることと相反することは忘れやすくなる。
  • 脳の省エネ機能:脳は膨大な情報を処理するため、効率化を図る仕組みを持っている。そのため、周囲の情報を無意識に分類・簡略化し、新しい情報を分析する負担を軽減するために、「既存のパターン」に当てはめようとしてしまう。一度何かを決めつけてしまうと、それが自分にとっての「基準」となり、新しい情報を基準に当てはめるようになる。その結果さらに基準が強化される。

どんなラベルを貼っているかで変わる

よく人は物事に対して自分なりのラベルを貼って、そのラベル越しに判断してしまいます。

例えば、「黒い液体といえば何ですか?」という問いに対して、“コーヒー”や“墨汁”を思い浮かべる人がいると思います。

では、その質問を「500mlのペットボトルに入っていて、炭酸があって、黒い液体」に変えると“コーラ”を思い浮かべるのではないでしょうか?

そして、恐らくほとんどの人が“コカコーラ”を思い浮かべたと思います。

しかし「そのペットボトルには青いラベルが貼ってある」と言われると、ペプシコーラを思い浮かべるでしょう。

このように人は、あるラベルを張ることによって、いとも簡単に自分の捉え方が変わってしまうことが分かります。

つまり、どうして苦手な選手だと思い込んでしまうのかというと、自分自身で“苦手な選手というラベルを貼って、その選手を見てしまっている”ということになります。

だからこそ、この苦手な選手というラベルを剥がすことがポイントになってくるのです。

一度負けると苦手な相手になってしまうある実業団選手の話

これまで私がサポートしたことがある選手の中で、「一度負けてしまうと、その選手のことを苦手だと思ってしまって、試合になると自分らしいプレーを出せなくなる」と相談してくれた個人競技の実業団選手がいました。

さらに話を聴いていくと、「負けた選手について考えたり、一緒に練習や試合となると、競技の楽しさが消えるくらい嫌だ」と涙ながらに話してくれました。

楽しいはずの競技が、苦手な選手と試合をするときは、嫌な時間になってしまう。

本当に苦しいことです。

実際その選手には、“苦手な選手という裏側に、もしポジティブな要素があるとしたらどんなことがあるか”について一緒に考えることにしました。

すると、「自分自身をもっと成長させてくれる」、「この選手を圧倒することができたら日本一になれるかもしれない」といったような言葉が出てきました。

まさに、これまでは苦手な選手というラベルで見ていたところから、自分自身を成長させてくれて日本一に導いてくれるような選手へとラベルが変わった瞬間でした。

このように、苦手な選手だというラベルから、自分自身にポジティブな変化を与えてくれる選手というラベルに貼り替えることが狙いだったのです。

ネガティブの裏側にあるポジティブを見つける

ネガティブの裏側にはポジティブなことが隠れていることが多くあります。

先ほどの選手の話にもありましたが、苦手な選手というネガティブに感じてしまうことも、捉え方を変えれば“自分を成長させてくれる選手”というポジティブな側面を感じることができるのです。

だからこそ、ネガティブの裏側にあるポジティブを見つけようとする姿勢が大切です。

皆さんにとっての苦手な選手は、自分自身にどんなポジティブな変化を与えてくれる存在でしょうか?

苦手に感じることも、その思い込みを取り除けば苦手ではなくなる

苦手な選手だと感じることも、苦手に感じてしまう思い込みがあるのです。

しかし、その思い込みをアスリート自身で気づき、取り除いていくことは簡単ではありません。

なぜなら、その思い込みはアスリートが無意識レベルで思っているところに隠れているからです。

私が行っているスポーツメンタルコーチングでは、苦手な選手だと思い込んでいる理由が、どこからきているのかを特定し、その思い込みを取り除くためのアプローチを行なっています。

“苦手な選手を克服したい”という方は、是非一度体験メンタルコーチングを受けてみてください。

スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、結果プロになれずに現役引退。 その後、人命に関われる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロサーファー、プロゴルファー、実業団選手を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にメンタルのサポートをしている。 すべての人が自分自身の可能性を信じて生きていける社会にすることが人生のテーマ。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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