100%の完璧な状態じゃなくても戦える選手になる|今の状態を受け入れることが、最大のパフォーマンスにつながる

試合が近づくにつれて、こんな気持ちになることはありませんか。

「今日の練習、なんか体が重かった。」
「睡眠がうまく取れなかった。」
「あの部分の調子が、まだ戻りきっていない。」

そういった不安要素がひとつでも頭にちらついたとき、「これじゃ100%の力が出せない」という焦りが、じわじわと心の中に広がっていく。

真剣に競技に向き合っているアスリートほど、その感覚をよく知っていると思います。

むしろ、それだけ本気で取り組んでいる証拠でもあります。
だからこそ、完璧な状態で試合に臨みたいという気持ちが生まれるのも理解できます。

ただ、今回はその「100%でなければ」という気持ちが、試合当日にどんな影響を与えているのかについて、書いていきたいと思います。

試合当日に「100%の状態」で臨める選手は、果たして何人いるのか

これまで多くのアスリートと現場で関わってきて、感じていることがあります。

それは、100%の状態で試合を迎えられる選手がどれだけいるのかということです。

どこかに痛みや違和感を抱えたまま戦っている選手がいます。
海外遠征では、長距離移動のあとに時差との戦いを強いられる選手がいます。
慣れない会場、慣れない気候、慣れない環境の中で、それでもコートに、グラウンドに、立たなければならない選手がいます。

100%の状態で臨めるに越したことはないです。
ただ、そうでない状況の中でも戦っていかなければならない選手が、たくさんいるのも事実です。

プロの選手であっても、トップを争うような選手であっても、それは変わりません。
そういった選手たちを近くで見ていると、「この状態で試合に出るのか」と思うような場面は、決して珍しくないのです。

「100%じゃない」という言葉が、体に何をするか

ここでひとつ、想像してみてください。

レモンを口に入れた瞬間を。
あの酸っぱさ、じゅわっとした感覚。

今これを読んでいるだけで、少し唾液が出てきた方もいるのではないでしょうか。

これは体が、思考や言葉に対して自動的に反応しているということです。
実際には何も口に入っていないのに、「レモン」という言葉を思い浮かべるだけで、体はその状況に反応してしまう。

実は、競技の場面でも、これとまったく同じことが起きています。

「今日は100%じゃない」
「コンディションが整っていない」
「本調子じゃないかもしれない」

そういった言葉を頭の中で繰り返すとき、体はその言葉にそのまま反応しています。
実際の状態がどうであれ、思考が体を「100%ではない状態」へと引っ張っていく。

つまり、「100%じゃない」という思考を持ち続けることは、パフォーマンス発揮の際に、ブレーキになりうるということです。

消そうとするほど、頭から離れなくなる

さらに厄介なことがあります。

心理学の研究の中に、こんな発見があります。
「シロクマのことを考えるな」と言われた人は、むしろシロクマのことが頭から離れなくなってしまう、というものです。
これは「皮肉過程理論」と呼ばれていて、何かを意識的に打ち消そうとすると、逆にそのことへの注意が高まってしまうという現象です。

「100%じゃないことを気にするな」、「コンディションのことは忘れよう」と思えば思うほど、意識はそちらへ向き続けてしまう。

つまり、不安を打ち消そうとすること自体が、不安を強化してしまうことがあるのです。

「気にしないようにしよう」は、実は気にし続けることと変わらないのです。
つまり、競技の場面でこれが起きているとき、選手のエネルギーは本来向けるべきプレーではなく、コンディションへの不安との戦いに使われていることになります。

では、どうすればいいのか

打ち消そうとしても意味がない、では何をすればいいのか。

答えは、受け入れることです。

ただ、「受け入れる」というのは、諦めることとは違います。

「もうどうにでもなれ」と投げやりになることでもない。

受け入れるというのは、今の状態をありのままに認識して、その状態で何ができるかに意識を向けることです。「100%じゃないから戦えない」ではなく、「今日の自分はこの状態だからこそ、何をするか」という視点に切り替えること。

この切り替えができたとき、意識はコンディションへの不安から解放されて、「今、何をすべきか」という本質的なところに集中できるようになります。

コーチングの中でこの意識の切り替えができた選手を見ていると、同じコンディションでも、明らかにプレーが変わることがあります。体の状態は変わっていないのにです。

それだけ、思考と体のつながりは深く、「受け入れる」という選択が、実際のパフォーマンスに影響を与えているのだと感じています。

準備は、最善を尽くす

ひとつ、誤解のないようにお伝えてしたいことがあります。

それは、「準備をいい加減にしていい」という話ではありません。

試合当日までに、できる限り100%に近いコンディションで臨めるよう、最善の準備を尽くすこと。
これはアスリートとして当然追求すべきことです。
そのプロセスを積み重ねることが、どんな状況でも覚悟を決めるときの土台にもなります。

ただ、準備をどれだけしたとしても、試合当日の状態は毎回違います。
環境は変わるし、体調も変わります。
毎試合、同じ条件で臨めることなど、ほぼありません。

だからこそ、当日迎えた状態を受け入れて戦えるかどうかが、準備と同じくらい大切なことだと思っています。

最善の準備をして臨む。
それでも100%でなければ、今日の状態で戦う。
その両輪がそろって初めて、試合当日のパフォーマンスが最大化されていくのだと感じています。

トップの選手たちが「強い」本当の理由

結果を残し続けているアスリートを見ていると、ひとつ共通していることがあります。

彼らは「100%でないと戦えない」とは思っていません。

万全ではない状態でも、「これが今日の自分だ」と受け入れて戦える。
その覚悟の決め方が、どんな状況でも自分のパフォーマンスを引き出せる強さになっている。

逆に言えば、コンディションが整っているときだけ結果が出せる選手というのは、自分でコントロールできないものに依存して戦っているということでもあります。

環境も体調も、毎試合変わります。
100%の状態が保証された試合など、ほぼ存在しません。

だからこそ、どんな状態でも戦える自分を持てるかどうかが、長くトップで戦い続けるための、本当の意味での強さになっていくのだと思っています。

今がすべてである

思い返してみてほしいのですが、これまでの競技生活の中で、完璧なコンディションで臨めた試合が何試合ありましたか。

多分、そう多くはないはずです。

それでも戦い、結果を残し、成長してきた。

その事実が、すでに「100%じゃなくても戦えた」という答えを示しているのではないかと思います。

「あのときの自分の100%に近い状態じゃないし、もっとこうしたかった」
そういった比較ではなく、今日の自分が全てであると、その状態で戦うしかないと決めて試合に臨めたとき、プレーは変わり始めます。

「100%でなければ結果が残せない」ではなく、「100%でなくても、戦える」

その感覚を持って、どんな試合にも臨めるようになれたらいかがでしょうか?

今の状態が全て。
その状態で戦うしかない。
そしてその状態で、戦っていける。

そう思える選手が、どんな状況でも強い選手だと私は思っています。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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