オフなのに休めないのはなぜか
アスリートの中には、オフの日にうまく休めない選手がいます。
練習していないと不安になる。
何か競技につながることをしていないと、前に進んでいない気がする。
休んでいるはずなのに、頭の中ではずっと競技のことを考えてしまう。
真面目に競技と向き合っている選手ほど、こうなりやすいのかもしれません。
でも、本来オフは、ただ練習をしない日ではありません。
次にいい状態で競技へ戻るために、自分を整え直す時間です。
競技中は、相手を見て、状況を読み、判断し、動き、修正することを繰り返しています。
これは競技に必要な力です。
ただ、その状態が続きすぎると、心も体も少しずつ硬くなっていきます。
視野が狭くなる。
考えが詰まりやすくなる。
感覚が鈍くなる。
頑張っているのに、なぜかうまくいかない。
だからオフには、競技中の状態から、いったん離れることが必要です。
遊びの時間に、脳では何が起きているのか
ここで関係してくるのが、デフォルトモードネットワークという考え方です。
少し言葉は難しいですが、これは、ぼーっとしているときや、力が抜けているとき、頭の中で自然に考えごとをしているときに働きやすい脳のネットワークです。
つまり、ぼーっとしている時間は、何も起きていない時間ではありません。
表面では止まって見えても、内側では整理が進んでいることがあります。
オフの遊びには、そういう時間が生まれやすい。
散歩をする。
自然の中に行く。
コーヒーを飲む。
友人とたわいない話をする。
本を読む。
笑う。
少し気がゆるむ時間を持つ。
こういう時間があるからこそ、頭の中に余白ができます。
試合の反省を無理に整理しようとしても、うまく言葉にならないことがあります。
でも、少し離れて散歩しているときに、ふと、あの場面はそういうことだったのかと腑に落ちることがある。
力が抜けたときの方が、自分の感覚が見えてくることもあります。
なぜ遊びがパフォーマンスにつながるのか
遊びが大切なのは、気分転換になるからだけではありません。
パフォーマンス向上のためにも必要だからです。
実際、学術的に見ると、ずっと集中や緊張が続く状態は、精神的疲労(mental fatigue)につながりやすいとされています。
精神的疲労が高まると、注意の質や判断、技術発揮が落ちやすくなることも分かってきました。
一方で、ぼーっとする時間や遊びの時間には、競技中とは違う脳の働きが起こりやすく、経験の整理や発想の広がりにもつながりやすいと考えられています。
遊びの時間には、競技中とは違う脳の使い方が起こりやすくなります。
注意の向け方が変わる。
考え方がゆるむ。
発想が広がる。
気持ちが戻ってくる。
すると、競技に戻ったときに、感覚がよくなったり、視野が広がったり、判断がスムーズになったりすることがあります。
これは、遊んだから急に能力が上がる、という単純な話ではありません。
遊びによって、脳と心が一つの状態に固まりすぎなくなる。
そのことが、結果としてパフォーマンスの回復や向上につながっていきます。
ずっと練習のことだけを考えていると、競技に向かいすぎて苦しくなることがあります。
でも、少し離れる。
少し遊ぶ。
少し笑う。
すると、競技との距離がちょうどよくなります。
このちょうどよさは、とても大事です。
競技の外にも自分が戻れる場所があると、人は安定しやすくなります。
好きな時間がある。
安心できる場所がある。
競技と関係なく笑える時間がある。
そうすると、競技は大事だけれど、競技が自分のすべてではない、という感覚を保ちやすくなります。
その余裕が、勝負どころでの落ち着いた判断や、思い切ったプレーにもつながっていきます。
オフは、次の集中をつくる時間
ここで一つ気をつけたいのは、遊びを義務にしないことです。
真面目な選手ほど、これもまた、やるべきことにしてしまいます。
ちゃんと休まなきゃいけない。
回復のために遊ばなきゃいけない。
でも、それではまた頭が緊張します。
遊びは、本来もっと自由なものです。
役に立つからやる、ではなく、
なんとなく心がほどけるからやる。
それで十分です。
何をしているとき、自分は少し心が軽くなるだろうか。
何をしているとき、競技者である前に、一人の人間として過ごせるだろうか。
その感覚を大事にしてみてください。
オフに遊ぶことは、自分を甘やかしていることではありません。
競技を長く続けていくために自分を整える、とても大切なことです。
少し離れてみる。
少し力を抜いてみる。
その時間があるからこそ、また競技に向き合える。
オフは、ただ休む時間ではなく、次の集中をつくる時間でもあります。
遊びは、そのためのひとつの大切なきっかけになるのだと思います。

