完璧主義はパフォーマンスを下げることがある

競技に本気で向き合っている選手ほど、完璧でいたいと思うものです。

もっといい準備をしたい。
もっといい状態で試合に入りたい。
ミスなくやりたい。
勝ちたい。

そう思うのは、決して悪いことではありません。
それだけ真剣だということだからです。

むしろ、いい加減ではいたくない、ちゃんと向き合いたいと思っているからこそ、基準が高くなるのだと思います。

ただ、その完璧さを求める気持ちが、あるときから自分を支えるものではなく、自分を苦しめるものになってしまうことがあります。

100%の状態で試合に入らなければいけない。
絶対に勝たなければいけない。
結果を出さなければ、自分を認められない。

そんな思いが強くなると、少しでも不安があるとき、少しでも感覚がよくないときに、心が一気に苦しくなってしまいます。

本当は試合の中でやるべきことに集中したい。
それなのに、この状態で大丈夫だろうか、と自分の状態ばかりが気になってしまう。
すると、焦りや不安が大きくなって、いつものプレーがしにくくなってしまうことがあります。

でも実際は、いつも100%の状態で試合に入れるわけではありません。

少し疲れが残っている日もあります。
気持ちが落ち着かない日もあります。
ウォーミングアップの感覚があまりよくない日もあります。
思ったように調整できないまま、本番を迎えることもあります。

それでも試合は始まります。
そして多くの場合、その完璧ではない状態で戦わなければなりません。

ここで完璧主義が強いと、100%ではない自分を受け入れにくくなります。

少し重い。
少し違和感がある。
少し不安がある。
その少しが気になって、頭の中がそのことでいっぱいになってしまうことがあります。

本当は相手を見るべき場面なのに、自分の状態ばかりを確認してしまう。
本当は次のプレーに向かうべきなのに、理想の状態に戻そうとしてしまう。
そうすると、今この瞬間に向けるべき集中が削られていきます。

動きが硬くなることもあります。
判断が遅れることもあります。
思い切ってプレーできなくなることもあります。

完璧を求めているはずなのに、完璧を求めることによって、かえってパフォーマンスが下がってしまう。
これは、実際によく起こることです。

だからこそ大切なのは、100%の状態で戦うことではありません。
100%でなくても戦える選手になっていることです。

少し緊張していてもできる。
少し不安でも動ける。
感覚が完璧でなくても、自分のプレーを続けられる。
思うように整っていなくても、その日の自分で勝負できる。

そういう力のほうが、本番ではとても大切です。

なぜなら、本番はいつも不確実だからです。
どれだけ準備をしても、試合には想定外があります。
流れが崩れることもあります。
気持ちが揺れる瞬間もあります。
相手によって、展開によって、自分の感覚も変わっていきます。

その中で必要なのは、崩れないことではありません。
崩れても修正できることです。
完璧なままでいることではありません。
どんな状況でも戦えることです。

完璧主義の苦しさは、結果との結びつきにも表れやすいです。

結果を出さないと、自分を認められない。
勝てないと、自分には価値がないように感じてしまう。
うまくいっているときはまだいいかもしれません。
でも、結果が出ない時期に入ると、その苦しさは一気に大きくなります。

競技の世界では、勝つことはもちろん大事です。
結果を求めることも自然なことです。
本気でやっているなら、なおさらそうだと思います。

でも、結果が出たときだけ自分を認めるという在り方では、競技人生はとても苦しくなってしまいます。

なぜなら、勝ち続けられる選手はほとんどいないからです。
どんなに優れた選手でも負けます。
思うようにいかない時期があります。
努力しているのに報われないように感じる期間もあります。

競技人生は、いつも右肩上がりではありません。
むしろ失敗したり、崩れたり、うまくいかなかったりする時間のほうが長いこともあります。

それなのに、勝った自分だけに価値がある、結果を出したときだけ認められる、という感覚で競技を続けてしまうと、うまくいかないたびに自分のことまで認められなくなってしまいます。

そうなると、挑戦すること自体が怖くなります。

失敗したくない。
崩れたくない。
ダメな自分を見たくない。
期待を裏切りたくない。

そんな気持ちが強くなると、本来必要だった思い切りやチャレンジが少しずつ失われていきます。
守りに入ってしまうこともあります。
無難にまとめようとしてしまうこともあります。
でも、それでは本来の力は出しにくくなってしまいます。

完璧主義は、向上心のように見えることがあります。
もちろん、向上心が含まれていることもあると思います。
でもその中には、失敗する自分を認めたくない気持ちが混ざっていることもあります。

もっと良くなりたい。
もっと高いところに行きたい。
その気持ちは素晴らしいものです。

ただそこに、うまくできない自分には価値がない、結果を出せない自分は認められない、という感覚が重なってくると、完璧主義は苦しさに変わっていきます。

だから、手放したほうがいいのは、高い基準そのものではありません。
準備を大切にすることでもありません。
細部にこだわることでもありません。

手放したほうがいいのは、完璧でなければ価値がない、という考え方です。

完璧でなくても価値はあります。
勝てない時期にも価値はあります。
苦しんでいる時間にも、意味がなくなるわけではありません。

うまくいっているときだけが、あなたの競技人生ではないはずです。
思うようにいかない時間も、迷う時間も、結果が出ない時間も含めて、競技人生です。

そして、その時間の中でも自分の成長に向き合っていくことが、結果的にパフォーマンスにもつながっていきます。

人は、自分を守ろうとしすぎると動けなくなります。
でも、失敗しても自分の価値までなくなるわけではないと思えると、少しずつ前に出やすくなります。
思い切ってプレーしやすくなります。
必要な挑戦がしやすくなります。

本当に強い選手は、毎回100点の自分で戦っている選手ではないのだと思います。

70点の日もある。
80点の日もある。
正直、あまりよくない日もある。
それでも、その日の自分で戦える選手。
完璧ではない自分を受け入れたうえで、その中でできる最善を尽くせる選手。
少し崩れたとしても、そこから修正できる選手。

そういう選手が、長い目で見ると強いのだと思います。

競技は、自分を証明するための場になりすぎると苦しくなります。
証明しようとすればするほど、失敗が怖くなるからです。

でも、競技は本来、今の自分を使って勝負する場でもあります。
今ある力で向き合う場でもあります。
完璧な自分になってから立つ場所ではなく、不完全な自分のままでも立ち続ける場所です。

100%じゃないと勝てないのではありません。
100%じゃなくても戦えること。
そこに、本番で力を発揮するための大事な土台があります。

完璧を目指すことが、いま自分を縛っていると感じるなら、少し立ち止まってみてもいいかもしれません。

いま必要なのは、完璧な自分になることではなく、完璧ではない自分でも戦えるようになることかもしれません。
結果が出ている自分だけを認めることではなく、結果が出ない時間の自分も受け入れていくことかもしれません。

競技人生は、思い通りにいかないことの連続です。
だからこそ、完璧であることよりも、どんな状況でも戦えることのほうが大切です。

うまくいかない日があってもいい。
不安な日があってもいい。
100%ではない日があってもいい。
それでも戦える。
それでも前に出られる。
それでもあなたの価値はなくならない。

その感覚が育ってくると、選手は少しずつ強くなっていきます。

完璧でなくても大丈夫です。
それでも戦えます。
そして、そう思える選手のほうが、本番では強いのだと思います。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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