頑張っている。 誰よりも練習している。
本気で競技と向き合っている。
それなのに、上手くいかない。
そんな経験、あなたにもありませんか?
結果が出ない日が続くと、気持ちが揺れ動きます。
「自分には才能がないのかもしれない」
「このまま続けていても意味がないのかもしれない」
そんな言葉が、ふと頭をよぎることもあるかもしれません。
しかし、少し待ってください。
上手くいかない理由は、あなたの才能でも、努力の量でも、競技への想いでもないかもしれないのです。
今回はその理由についてコラムにまとめました。
きっとこのコラムを通じて、これまでと違った捉え方が、できるきっかけとなったら嬉しく思います。
知恵の輪をやったことがありますか?
知恵の輪とは、金属の輪っかが複雑に絡み合ったパズルです。
実際に触れたことのある人も多いと思います。
知恵の輪に初めて挑戦するとき、多くの人は「力ずく」か「同じ動き」で外そうとします。
ぐいっと引っ張ってみる。
それで外れなければ、また同じように引っ張る。
角度を変えずに、同じ方向へ、何度も何度も。
一生懸命、本気でやってみるけど外れない。
段々と色々な思考が出てきます。
「なんでこんなのが外れないんだ」
「もっと力を入れれば外れるんじゃないか」
そうやって、同じやり方をより強く、より速く繰り返していく。
でも、それをどれだけ続けても、知恵の輪は外れません。
なぜなら、知恵の輪には「正しい外し方」があるからです。
同じ動きをいくら繰り返しても、その動きが正解でない限り、永遠に外れることはないのです。
あなたの努力が、知恵の輪に似ているとしたら
ここで、少し立ち止まって考えてみてほしいのです。
今、あなたが取り組んでいること、そのやり方は、いつから変わっていませんか?
上手くいかない状況が続いているとき、多くのアスリートは「もっと頑張れば乗り越えられる」と考えます。
練習量を増やす。
気合いを入れ直す。
同じメニューをより真剣にこなす。
その姿勢は、本当に素晴らしいと思います。
ただ、客観的に見たとき、それは知恵の輪を「同じ動きでより力強く引っ張り続けている」姿と、重なって見えることがあるのです。
努力の量を増やすことと、やり方を変えることは、まったく別のことです。
上手くいかないことが続いているなら、そこには何か「ずっと同じになっている何か」があるのかもしれません。技術的なことかもしれないし、フィジカル的なことかもしれない。
練習の取り組み方かもしれないし、試合前の過ごし方かもしれない。
それが何なのかは、本人だけではなかなか気づけないことが多いのです。
なぜ自分では気づきにくいのか
ここが、このコラムでいちばん伝えたいポイントです。
「気づけない」のは、意志が弱いからでも、頭が悪いからでも、真剣さが足りないからでもありません。
むしろ、本気で取り組んでいるアスリートほど、気づきにくくなる構造があるのです。
心理学に「確証バイアス」という言葉があります。
これは、人が自分の信じていることを裏づける情報ばかりを無意識に集めてしまう、という心の働きです。
たとえば、「このトレーニング方法が正しい」と信じているアスリートは、それがうまくいっているように見える場面には敏感に気づきます。
一方で、うまくいっていないサインは、無意識のうちに「たまたまだ」「まだ足りないだけだ」と処理してしまいやすい。
信じる力が強いほど、このバイアスも強く働きます。
本気で競技に向き合っているアスリートは、信じる力も人一倍強い。
だからこそ、自分のやり方への疑問が生まれにくく、「もっと同じことを続ければいつかうまくいく」という方向に意識が向いてしまうのです。
さらに、もう一つの心理的なメカニズムがあります。
人は、変化に対して本能的に抵抗を感じる生き物です。
「やり方を変える」ということは、脳にとって小さなストレスを伴います。
今まで慣れ親しんだやり方を手放すことへの不安や、変えることで今まで積み上げてきたものを否定するような感覚。
そういった感情が、変化へのブレーキになることがあります。
「変えたら、今まで頑張ってきた自分はなんだったんだ」という気持ちは、よく理解できます。
それは弱さではなく、それだけ真剣にやってきた証でもあります。
ただ、その「変えたくない」という感覚が、気づきをさらに遠ざけてしまうことがある。
視点が「内側」だけになっているとき、人は自分が知恵の輪を同じ方向に引っ張り続けていることに、なかなか気づけないのです。
だからこそ、「外側の目」が必要になります。
つまり、自分では見えていないものを、別の角度から照らしてくれる存在です。
ふと違う角度でやってみたとき
知恵の輪の話に戻ります。
ずっと外れなかった知恵の輪が、ふとした瞬間に「あれ、こうしてみたら?」と違う動きを試したとき、すっと拍子抜けするくらい簡単に外れることがあります。
「え、こんなに簡単だったの?」と思わず笑ってしまうくらい、あっさりと。
競技でも、まったく同じことが起きます。
ずっと悩んでいたことが、少し視点を変えるだけで、こんなにもスムーズに変わるのかと驚くくらい、現状が動き出すことがあります。
フォームのほんの小さな修正かもしれない。
試合に向かうときの心の持ち方かもしれない。
自分の強みへの捉え方かもしれない。
変えることは、諦めることではありません。
むしろ、前に進むための「選択」になるのです。
違う視点を持つために
では、どうすればその「違う角度」を見つけられるのか。
そのためには、自分の外に「視点を持った存在」が必要です。
コーチ、チームメイト、家族。
信頼できる誰かに話を聞いてもらうことで、自分では気づけなかった何かが見えてくることがあります。
「そんな見方ができるんだ」、「そういうことだったのか」と、霧が晴れるような感覚を味わったことのあるアスリートは、きっと少なくないはずです。
大切なのは、「外側の目」を意識的に取り入れようとすることです。
自分一人で答えを出そうとするのではなく、誰かと話す中で気づきを得る。
そのプロセス自体が、すでに「違う角度」への第一歩になります。
上手くいかないことは、あなたの弱さじゃない
頑張っているのに上手くいかないとき、その原因を「自分の弱さ」に求めないでほしいのです。
あなたが弱いのではない。
努力が足りないのでも、才能がないのでもない。
ただ、知恵の輪の「外し方」をまだ見つけていないだけかもしれない。
今のやり方を疑うことは、今までの自分を否定することではありません。
今まで積み上げてきたものがあるからこそ、少し角度を変えるだけで、ものごとが一気に動き出すことがある。
上手くいかない今は、そのための「問い」を持てるタイミングでもあります。
「自分は今、知恵の輪をどう引っ張っているだろう?」
その問いを、ぜひ一度、自分に向けてみてください。
上手くいかないのは、あなたの力が足りないからではなく、まだ正しい角度を見つけていないからかもしれません。
このコラムを読んだあなたが、今の状況を乗り越えられることを祈っています。

