「すでにプロだと思って生きる」その積み重ねが、あなたをプロにする

はじめに、質問してもいいでしょうか。

あなたは今日、どんな気持ちで練習に向かいましたか?

「早くプロになりたい」
「まだまだ自分には足りないものがある」
「あの選手みたいになりたい」

そんな気持ちを胸に抱えながら、毎日グラウンドに立っているかもしれません。
その真剣さは、本当に素晴らしいことだと思います。

でも今日は、その競技との向き合い方を、少しだけ見直してみるというお話をしたいと思います。

「プロになろう」と「プロだと思って」はどう違うのか

スポーツメンタルコーチとして、私はこれまで多くのアスリートと関わってきました。
プロとして第一線で活躍する選手たちも、そしてあなたのようにプロを目指して日々努力している若い選手たちも。

その中で、あることに気づきました。

プロになれる選手と、なかなかたどり着けない選手の間には、技術や体力の差だけではない、ある「思考の違い」があるということです。

それは、

「プロになろうとして過ごす」のか、「プロだと思って過ごす」のか

この違いです。

「プロになろう」と思っている状態は、言い換えると「今の自分はまだプロではない」という前提に立っています。
ギャップを埋めようとするエネルギーは大切ですが、無意識のうちに「自分はまだ足りない存在だ」というメッセージを自分自身に送り続けていることにもなります。

一方で、「プロだと思って過ごす」というのは、すでに自分がプロであるという前提で、一日一日を生きるということです。
練習への向き合い方、食事の選び方、睡眠のとり方、言葉の選び方、チームメイトへの接し方など、すべてが変わってきます。

「でも、実際にはまだプロじゃないのに、そう思い込むのはおかしくないですか?」

そう感じる方もいるかもしれません。
しかしこれは、「嘘をつく」ことでも、「現実から目を背ける」ことでもありません。
もっと深い、科学的な根拠のある話なのです。

バンデューラの「モデリング理論」が教えてくれること

心理学者のアルバート・バンデューラは、「社会的学習理論」の中で、モデリング(modeling)という概念を提唱しました。

モデリングとは、簡単に言うと「お手本となる人物を観察し、その行動や思考を取り入れることで、自分自身も変化していく」というプロセスです。

人間は、直接経験しなくても、誰かの行動を見たり、その人になりきることで、新しいスキルや行動パターンを学ぶことができます。
これはスポーツの世界でも、ビジネスの世界でも、日常生活でも起きていることです。

たとえば、あなたが尊敬しているプロ選手がいるとします。
その選手は試合前、どんな表情をしていますか?
どんな言葉を使いますか?
失敗したとき、どんな反応をしますか?
チームメイトにどんな声をかけますか?

そのすべてを「観察」し、「真似る」ことで、あなたの脳と体は少しずつその選手に近づいていきます。

これが「プロになりきる」ということの本質です。

「なりきる」とはどういうことか

では、具体的に何をすればいいのでしょうか。

一番最初にできることは、言葉を変えることです。

「どうせ自分なんて」という言葉を、「どうすれば自分ならできるか」に変える。
「まだ足りない」を「今日も成長している」に変える。
「失敗したらどうしよう」を「挑戦する価値がある」に変える。

言葉は思考をつくり、思考は行動をつくり、行動は習慣をつくり、習慣はその人そのものをつくります。

次に、振る舞いを変えることです。

あなたが理想とするプロ選手は、グラウンドに入るとき、どんな歩き方をしていますか?
練習中、どんな目をしていますか?
ミスをしたとき、どんな表情で次のプレーに向かっていますか?

振る舞いを変えるためには、まず「知ること」が必要です。
今まで自分がいいと思ってやってきた行動とは違うものを、しっかり分析したことがありますか?
自分が目指している世界でプレーしている選手の試合を、実際に観に行く。
ドキュメンタリー映像を見る。
その選手が書いた本を読む。
インタビューで語っている言葉に耳を傾ける。
やれることは、実はたくさんあります。

「あの選手、こんなふうに振る舞っているんだ」「こんなことを大事にしているんだ」という発見の積み重ねが、少しずつあなた自身の振る舞いを変えていきます。
グラウンドの外にいる時間にこそ、自分を変えていくきっかけは多くあります。

そして、時間の使い方を変えることです。

ここで一つ、大事なことをお伝えしたいと思います。
「プロらしく過ごす」というのは、「競技のことだけを考え続ける」ことではありません。
私がこれまで関わってきた選手たちを見ていて気づくのは、むしろ「遊ぶ」のがうまいということです。

全力で練習したあと、しっかり笑って、食べて、寝る。
仲間とくだらない話で大笑いする時間も大切にしている。
自分の心が休まるような時間を大切にしている。
その余白が、パフォーマンスを発揮することに繋がっている。
大切なのは競技と遊びのメリハリなのです。
「今日はちゃんと休む」「今日は思いきり遊ぶ」という選択もまた、プロらしい判断だと私は思っています。

あなたがプロだとしたら、今夜の夕食はどうしますか?
プロだとしたら、今日の休み時間はどう過ごしますか?
そう問いかけてみてください。
きっと、今の自分の選択が少し変わってくるはずです。

「自己効力感」という力を育てる

実はバンデューラは、自己効力感(自分にはできるという感覚)を高める方法の一つとして「代理経験」を挙げています。

つまり、誰かがやり遂げる姿を見たり、その人の思考や行動に触れることで、「自分にもできるかもしれない」という感覚が育まれていく、ということです。

「あの選手も、最初は自分と同じところから始まったんだ」
「あの人が同じ壁を乗り越えられたなら、自分にも可能性がある」

プロの試合を見に行ったり、ドキュメンタリーを見たり、本を読んだりすることには、振る舞いを学ぶだけでなく、こうして「自分にもできる」という感覚を育てる効果もあるのです。

一日の終わりに問いかけてみる

今日の練習で、プロの選手はどう動いただろうか。

今日の会話で、プロの選手はどんな言葉を選んだだろうか。

今日の食事で、プロの選手はどんな選択をしただろうか。

この問いを持ち続けるだけで、あなたの一日は変わり始めます。

最初は「なりきっている感じがして恥ずかしい」と思うかもしれません。
しかし、最初はそれでいい。
真似ることは、決して恥ずかしいことではありません。
すべての学びは模倣から始まります。
赤ちゃんが言葉を覚えるのも、子どもが親の背中を見て育つのも、みんな「真似る」ことから始まっています。

プロの選手たちも、かつては誰かの背中を見て、真似して、少しずつ自分のものにしてきたのです。

最後に

あなたが今、プロを夢見てトレーニングを重ねているという事実は、すでにあなたの中に「プロになれる何か」があることを示していると思います。

「まだ足りない」と自分を責めるのではなく、「今日も、プロとして過ごす一日をもらった」という感覚で、明日の朝を迎えてみてください。

言葉が変わり、振る舞いが変わり、習慣が変わるとき、あなたは気づかないうちに、「プロになろうとしている自分」から「プロである自分」へと、確実に近づいていきます。

プロはプロになる前からプロである。
そんな日々を過ごしていけることを祈っています。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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