ネガティブな感情を自分の力に変えるために

アスリートと話していると、こんな言葉を聞くことがあります。

「試合になると、周りの目が気になって集中できないんです。」
「緊張しすぎてしまって、練習でできていたことができなくなって。」
「不安になって、必要以上に練習してしまう自分がいて。」
「自信が持てなくて、いつも一歩引いてしまうんです。」

その言葉を聞くたびに、私はこう思います。

この選手は、自分の感情を弱さだと思っているんだなと。

でも、私にはそう見えない。

その感情の中に、その選手の強さが隠れているように見えるからです。

今回は、そのことを書いていきたいと思います。

ポジティブな人もネガティブを感じている

「メンタルが強い選手」と聞いたとき、どんなイメージを持つでしょうか。

緊張しない。
不安にならない。
いつも前向き。

そういうイメージを持つ人が多いかもしれません。

でも、心理学の研究が示しているのは、少し違うことです。

ポジティブに見える人が、ネガティブな感情を感じていないわけではありません。
緊張もするし、不安にもなるし、自信をなくすこともある。

では、何が違うのか。

それは、ネガティブな感情の裏側にあるポジティブな意味に気づくのが上手いということ。

ネガティブを感じないのではなく、ネガティブの中にあるポジティブを見つける力がある。
そういうことなのだと思います。

感情に良いも悪いもない

ネガティブな気持ちになると、私たちはつい「こんなことを感じてはいけない」「もっとポジティブにならなきゃ」と自分を責めてしまいます。

でも、感情に良いも悪いもありません。

緊張も、不安も、自信のなさも、それはすべて心が正直に反応しているだけです。

その感情をなかったことにしようとすると、かえって心が消耗してしまう。
メンタルコーチングの中でそういう選手を何人も見てきました。

大切なのは、ネガティブな感情を消すことではなく、その感情をどう受け取るか、だと思っています。

角度を変えると見えてくるもの

ここで少し、一緒に考えてみてください。

「周りの目が気になる」という感覚を持っている選手がいます。

その選手は、それを弱さだと思っているかもしれません。

しかし、周りの目が気になるということは、それだけ周りの変化に敏感に気づけるということでもあります。
チームメイトの調子、相手の細かい動き、会場の空気感。
そういうものを読み取れる感性は、スポーツにおいてむしろ強みだと思います。

「緊張しすぎてしまう」という選手もいます。

緊張は、体と心が「これは大事な場面だ」と教えてくれているサインです。緊張できるということは、それだけそのことに本気で向き合えているということ。

そして、心理学の研究でも示されているように、適度な緊張はパフォーマンスを高めます。
まったく緊張していない状態より、少し緊張している状態のほうが、集中力も判断力も上がることがわかっています。
緊張は、消すべきものではなく、うまく使うものです。

何より、緊張しない選手より、緊張しながらも挑み続けている選手のほうが、それだけ本気で競技と向き合えているのだと感じます。

「練習しないと不安になってしまう」という選手もいます。

それを聞いて、メンタルが弱いと感じる人もいるかもしれません。
しかし、練習しないと不安になるということは、それだけいい準備をしたいという気持ちが強い証拠です。
手を抜いても気にならない人より、「もっとやっておきたかった」と感じる人のほうが、間違いなく成長できます。

そして、やるべきことをやりきったとき、人は不思議と覚悟が決まります。
「これだけやってきた」という積み重ねが、どんな結果も受け入れられる強さをつくる。
いい意味での開き直りが生まれる。
不安を感じるからこそ準備ができて、準備ができるからこそ覚悟が決まる。
その流れが自然とできているのだと思います。

「自信が持てない」という選手もいます。

自信が持てない理由の多くは、自分の課題がはっきり見えているからです。
改善したい部分が見えているからこそ、自信がないと感じる。
逆に言えば、自分をしっかり見ることができている、ということでもあります。
自信がないのではなく、成長しようとしているのだと捉えることができます。

ネガティブとポジティブは表裏一体

このように、ネガティブに見える感情の裏側には、必ずポジティブな意味が隠れています。

ネガティブとポジティブは、コインの表と裏のようなものです。

同じ感情が、見る角度によってまったく違う意味を持つ。

その角度に気づけるかどうかだけで、同じ感情がまったく違うものになります

自分の感情を「弱さの証拠」として見るのか、「本気で向き合っている証拠」として見るのか。
どちらの視点を持つかによって、その後のパフォーマンスは大きく変わってきます。

メンタルコーチングの中でアスリートと向き合っていると、ネガティブな感情を感じるたびに自分を責めてしまう選手が多いことに気づきます。
感情を感じることに慣れていなかったり、ネガティブな感情はいけないものだという思い込みを持っていたりする。

しかし、感情は抑えるものではなく、その感情が伝えようとしていることを受け取り、次の行動へ変えていくものだと思っています。

ネガティブな感情の意味を変える

ネガティブな感情が出てきたとき、一度こう問いかけてみてください。

「この気持ちの裏側に、どんな意味があるだろう。」

最初は難しく感じるかもしれません。
しかし、繰り返すうちに少しずつ見えてくるものがあります。

「緊張しているな」→「それだけ本気なんだな」
「不安だな」→「それだけ準備したいんだな」
「自信がないな」→「それだけ自分と向き合えているんだな」

こんなふうに、感情の意味をひとつずつ変えていくこと。

それだけで、同じ感情がまったく違うものに見えてきます。

感情を変えようとするのではなく、感情の意味を変えていく。
そのことが、メンタルを整える上でとても大切なことだと思っています。

感情が動くのは前に進もうとしている証拠

最後に、これだけ伝えさせてください。

ネガティブな感情を感じているということは、本気で競技に向き合えているということです。

どうでもよくなった瞬間、人は何も感じなくなります。
緊張もしなくなるし、不安にもならなくなる。

心が揺れ動くということは、それだけまだ前に進もうとしているということです。

周りの目が気になるのも、緊張してしまうのも、不安になるのも、自信が持てないのも。
それはすべて、あなたが本気で競技と向き合っている証拠だということなのです。

ネガティブな感情を感じることは、弱いことでも、おかしいことでもありません。

その感情の裏側に目を向けてみてください。

そこにはきっと、あなた自身の強さが隠れているはずです。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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