試合のたびに緊張してしまうアスリートへ。それが繰り返されるのには理由がある

これまで多くのアスリートのメンタルをサポートさせていただく中で、ひとつ気づいたことがあります。

それは、「同じ悩みが繰り返される」という経験を持つ選手が、本当にたくさんいるということです。

一度は解決できたと思っていたのに、気がつくとまた同じところでつまずいている。
そういう経験、あなたにも心当たりはありますか?

今回は、どうして同じ悩みが繰り返されてしまうのか。
どうすれば、その悩みを克服することができるのか、についてコラムにまとめました。

繰り返される悩みには、必ず「原因」がある

同じ悩みが何度も出てくるということは、実はひとつの大切なことを教えてくれています。

それは、その悩みを生み出している「根本的な原因」がまだ変わっていないということです。

悩みというのは、突然どこからかやってくるわけではありません。
ものごとに対する捉え方、考え方、思考のクセ。
そういった、自分でも気づきにくい「内側のパターン」が固定化されているとき、同じ状況に直面するたびに、同じ悩みが顔を出してきます。

私たちは日常の中で、あらゆる場面において「無意識の判断」を繰り返しています。
たとえば試合という場面に直面したとき、脳は過去の経験をもとに瞬時に反応します。

「この状況は危険だ」
「失敗するかもしれない」
「うまくやらなければいけない」

こうした反応は、意識して選んでいるわけではなく、これまでの経験の積み重ねの中で形成されたパターンとして、ほぼ自動的に動いています。

そしてこのパターンは、繰り返されるほどに強化されていきます。
同じ場面で同じ反応を繰り返すたびに、そのルートが脳の中でより深く刻まれていく。
だからこそ、「また同じことで悩んでいる」と感じるとき、それは意志の弱さや努力不足のせいではなく、パターンそのものがまだ変わっていないということなのです。

表面に見えている悩みだけをなんとかしようとしても、そのパターン自体が変わらない限り、また同じ悩みが生まれてきます。
だからこそ、「またこのことで悩んでいる」と感じたとき、それは自分を責めるサインではありません。
「根本にあるものに、まだ向き合えていないよ」という、大切なメッセージなのです。

試合になると緊張しすぎてしまう、という悩みで考えてみると

わかりやすい例として、緊張の話をしてみます。

試合のたびに、「また緊張してしまった」と感じる選手は少なくありません。
そのたびに呼吸法を使ってみたり、気持ちを切り替えようとしたり、なんとかその場をしのごうとする。
うまくいく日もある。
しかし、次の試合ではまた同じように緊張に支配されてしまう。

この繰り返しに悩まされている選手に、しっかり向き合ってほしいことがあります。

それは、「緊張したときにどう対処するか」ではなく、「そもそも、なぜ毎回あれほど緊張しすぎてしまうのか」という問いです。

試合という場面に対してどんな意味づけをしているのか。
失敗することを、心の中でどれだけ恐れているのか。
自分のパフォーマンスに対して、どんな基準を無意識に持っているのか。
「うまくやらなければいけない」という感覚は、いつ頃から、どんな経験の中で育ってきたものなのか。

こうした問いに向き合っていくと、緊張の奥にあるものが少しずつ見えてきます。
緊張そのものが問題なのではなく、緊張を生み出している「自分の中の何か」に気づくことが、本当の意味での変化への入り口になります。

緊張を一時的に和らげることは、もちろんできます。
ただ、それはあくまでも「その場をしのぐ」という対処です。
根本にある思考のクセや無意識の反応パターンが変わらない限り、緊張しすぎてしまう状態は、これからも試合のたびに繰り返されていきます。

繰り返す怪我も、同じ構造で考えられる

これはメンタルだけの話ではありません。身体面でも、まったく同じことが言えます。

腰が痛くなるたびに、鍼治療やマッサージで痛みを和らげる。
少し楽になって競技に戻ると、また数週間後に同じ場所に張りや痛みが出てくる。
その繰り返し。

こういうとき、腰の痛みを取り除くこと自体は間違いではありません。
ただ、「なぜ腰に痛みが出てしまうのか」という原因を取り除くことが大切になります。
たとえば胸椎や股関節の可動域の制限があったり、特定の筋肉が機能不全になっていることもあるでしょう。
そこが変わらないままでいる限り、腰への負担はなくなりません。

同じ怪我を繰り返しているとしたら、その治療は対処療法としては意味があっても、根本的な解決にはなっていない可能性があります。
身体もまた、「繰り返されるパターンの中に、まだ見ていない原因がある」と教えてくれているのです。

メンタルも身体も、根本にあるものを変えていかない限り、表面に出てくる症状はなくなりません。
この構造は、競技の中で起きるさまざまな悩みに共通していることだと、私は感じています。

なぜ、対処療法を選び続けてしまうのか

ここで少し立ち止まって考えてみたいのですが、わかっていても対処療法を繰り返してしまうのはなぜでしょうか。

それには、いくつかの理由があると思っています。

ひとつは、対処療法は「すぐに効果が感じられる」からです。
緊張したときに呼吸を整えれば、その場は少し楽になります。
腰が痛いときにマッサージを受ければ、痛みは和らぎます。
即効性があるということは、それだけ「効いている」という感覚を得やすい。
競技中のアスリートにとって、目の前の問題をとにかく早く解決したいという気持ちは当然のことです。

もうひとつは、「根本に向き合うことへの怖さ」があるからだと思います。
自分の内側にある思考のクセや、これまで無意識に繰り返してきたパターンを見つめることは、思っている以上に勇気が必要です。
それは時に、自分が長年信じてきた考え方や、積み上げてきたものを揺るがすような感覚をともなうこともあります。
だから、そこに触れないまま、目に見える症状だけを処理し続けてしまう。

それは決して弱さではありません。
人間として自然な反応です。
ただ、その繰り返しが長くなるほど、根本はより深く、より見えにくいところに隠れていきます。
だからこそ、気づいたときが向き合うタイミングだと、私は思っています。

対処するより、根本を変えていく

私がスポーツメンタルコーチングの中で大切にしていることのひとつが、まさにこの「根本を変えていく」というアプローチです。

具体的には、まず選手自身が「自分はどんな場面でどんな反応をしているのか」を丁寧に観察するところから始めます。
緊張を例にとれば、「試合前にどんな言葉を自分にかけているか」、「失敗したとき、頭の中でどんな声が聞こえてくるか」、「そもそも試合という場面をどう意味づけているか」
こうした問いを通じて、自分でも気づいていなかった思考のパターンを少しずつ明らかにしていきます。

そして次に、そのパターンを変えていく作業に入ります。
長年かけて形成されてきた無意識の反応を変えることは、一朝一夕にはできません。
ただ、正しい方向に向かって継続していくことで、少しずつ「デフォルトの反応」が書き換えられていきます。

大切なのは、「できなかった自分」を修正しようとするのではなく、「これまでそういう反応をしてきた自分」をまず理解することです。
その理解があってはじめて、新しいパターンへの変化が起き始めます。

呼吸法や筋弛緩法といったメンタルトレーニングの技術は、もちろん役に立ちます。
ただそれは、根本が変わっていく過程の中で使ってこそ力を発揮するものだと、私は考えています。
根本が変わるから、技術が生きる。
その順番を大切にしています。

根本が変わると、何が変わるのか

では、根本が変わっていくと、実際にどんなことが起きるのでしょうか。

よく選手から聞く言葉があります。
「問題がなくなったというより、同じ場面でも以前とは違う自分でいられるようになった」という感覚です。

試合前に緊張はある。
でも、その緊張に飲み込まれなくなった。
「また緊張している」という事実に気づきながらも、そこから自分を取り戻す感覚が出てきた。
そういう変化です。

これは、緊張という感情が消えたわけではありません。
試合という場面に対する自分の反応パターンが変わることで、緊張との関係が変わっていくということです。
緊張を「敵」として戦うのではなく、「自分の一部」として共存できるようになる。
その感覚は、競技のパフォーマンスだけでなく、競技に向き合う姿勢そのものを変えていきます。

また、ひとつの根本が変わると、それまで別々の悩みだと思っていたことが、じつは同じパターンから来ていたと気づくことも少なくありません。
緊張の問題だと思っていたことが、じつは自分への評価基準の問題だった。
集中力の問題だと思っていたことが、じつは失敗への恐れと深くつながっていた。
そういう気づきが連鎖していくことがあります。

根本が変わるということは、ひとつの悩みが解決するだけでなく、悩みそのものの生まれ方が変わっていくということでもあります。

もしいまも、同じ悩みが繰り返されているなら

あなたが「また同じことで悩んでいる」と感じているとしたら、それはまだ諦めなくていいサインです。

同じ悩みが繰り返されるのは、意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
ただ、まだ根本にあるものに気づけていないだけです。
そしてそれは、自分ひとりで見つけることが難しいものでもあります。
自分の内側にあるパターンというのは、あまりに自然に動いているために、自分では「当たり前のこと」として見えなくなってしまっているからです。

私がこれまで関わってきた選手たちも、最初はそれぞれの「症状」に悩んでいました。
しかし、根本にあるパターンに気づき、それが少しずつ変わっていったとき、悩みそのものへの向き合い方が変わっていきました。
問題がなくなるというより、同じ場面に直面しても、以前とは違う自分でいられるようになる。
そういう変化です。

その悩みの根っこには、まだ見ていない何かがある。
そこに気づいたとき、きっとあなたの競技は少し違う景色を見せてくれるはずです。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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