「正しい」と思っていたことが、あなたの足かせになっているかもしれない|思い込みは、気づかぬうちに積み重なる

長年、多くのアスリートと関わってきて、ひとつ気づいたことがあります。

自分が「正しい」と信じていること。
当たり前だと思っていること。
それが実は、そうではなかった。
そんな場面に、数えきれないほど出会ってきました。

そしてその「正しい」という感覚は、ある日突然生まれるわけではありません。
日々の練習の中で、監督やコーチからのひと言で、あるいはチームの雰囲気の中で、少しずつ、気づかないうちに積み重なって、やがてひとつの「思い込み」として心の中に根を張っていくものです。

だからこそ厄介なのです。

自然に形成されたものだから、「思い込み」という自覚がほとんどないまま、それが当たり前として機能してしまいます。
そして気づかぬうちに、思い込みがあなたの可能性に蓋をしてしまっていることがあるのです。

だからこそ、自分自身が正しいと思っていることと一度向き合ってほしいのです。

何事にも、必ず「裏側」がある

競技の世界で生きていると、多くの「正解」を刷り込まれます。
でも本当は、どんな選択にも必ず二面性があります。

ひとつの判断をすることで、得るものがある。
その一方で、失っているものもある。
ひとつの信念を持つことで、力になることがある。
その一方で、それが知らないうちにブレーキになっていることもある。

大切なのは、一面だけを見るのではなく、その選択の裏側にあるものを「知ろうとする習慣」を持つことです。

「その考えは本当に正しいのか?」
「もし逆の視点から見たら、どう見えるだろう?」

そう問いかける習慣が、アスリートとしての視野を大きく広げてくれます。

「練習中に笑ってはいけない」という思い込み

具体的な話をしましょう。

これまで関わってきたアスリートの中に、こんな選手がいました。
学生時代から「練習中は笑ってはいけない」と言われてきた。
厳しい環境の中で、それがいつしか「当たり前のこと」「正しいこと」として心に刻まれていった選手です。

でも、その選手の心の奥底には、別の声がありました。

「本当は、競技を楽しみたい」
「楽しんでプレーすることが、自分が目指す姿に相応しいと感じている」

頭ではわかっているのに、身体がついてこない。
前に進みたいのに、どこかでブレーキがかかってしまう。
そんな状態でした。

この「練習中は笑ってはいけない」という思い込みは、決して悪意から生まれたものではありません。
その環境で真剣に取り組んできた証でもあります。
でもその信念が、心の奥から湧き上がってくる「競技を楽しむ」という感覚と、真っ向からぶつかってしまっているということです。

だから毎日、一歩踏み出せない感覚があった。
行きたい方向はわかっているのに、なぜか前に進まない。
そういう状態が続いていたのです。

思い込みが「ここまで」連れてきてくれた

ここで大切なことをお伝えしたいのですが、思い込みは「悪いもの」ではありません。

たとえば日本代表になったとしましょう。
そのレベルまで上り詰めることができたのは、今まで持ってきた信念や思い込みがあったからでもあると言えます。

「絶対に諦めない」
「このくらいで満足してはいけない」
「もっとやれる」

そういった思い込みが、あなたを高みへと押し上げてきた部分は確かにあるはずです。

だからこそ、まずそこは認めてほしいのです。
今の自分があるのは、これまで持ち続けてきた信念があったからだと。

ただ、ここからが大切です。

「ここまで来られた思い込み」が、「ここから先に行くための思い込み」とは、必ずしも一致しないのです。

これまでの自分を支えてきた信念が、新しいステージでは「壁」になってしまうことがある。
そのまま同じ思い込みを持ち続けていると、越えられない何かが出てくる。
そういう局面が、高いレベルで競技をしているアスリートには必ず訪れます。

「思い込みの蓋を取る」ということ

私がスポーツメンタルコーチングの軸に置いているのが、まさにこの「思い込みの蓋を取る」という考え方です。

もう少し具体的に言うと、アスリートが持っているセルフイメージ(「自分はこういう人間だ」「自分にはこれができる(できない)」という自己認識)が、パフォーマンスや行動に大きく影響を与えているということです。

セルフイメージは、目標を達成する上での「器」のようなものだと私は考えています。
どれほど努力しても、その器の大きさを超えた成果はなかなか出てこない。
だからこそ、まず器そのものを広げる必要がある。

そのためには、今自分がどんな思い込みを持っているかを知ることが、最初の一歩になります。

「私は〇〇が苦手だ」
「どうせ緊張してしまう」
「ここ一番で力が出ない」

こうした信念のひとつひとつが、あなたのセルフイメージを形作っています。
そしてそれらが、知らないうちにブレーキとして機能してしまっている場合があるのです。

1人では気づけないことがある

しかし、ここに現実的な難しさがあります。

自分の思い込みは、自分ではなかなか見えないということです。

空気に気づかないように、水の中にいる魚が水を意識しないように、自分の中で「当たり前」になっているものは、意識の外に出てしまいます。
長年かけて染み付いた信念はなおさらです。

だからこそ、外からの視点が必要になります。

私がアスリートと向き合う中で大切にしていることのひとつが、「何がブレーキになっているか」を一緒に見つけることです。
本人が気づいていなかった思い込みが、セッションの中で浮かび上がってくる瞬間があります。

「あ、私、ずっとそう思い込んでいたんだ」

そう気づいた瞬間から、何かが動き始めます。
蓋が取れて、それまでつまずいていたものが、すっと軽くなる感覚を持てる選手が多いです。

あなたが本当に達成したい目標のために

最後に、ひとつ問いかけさせてください。

あなたが競技を通じて、心から達成したいと思っている目標はなんですか?

頭で考えた目標ではなく、想像したときに胸の奥がワクワクする、そういう目標です。

その目標を達成するに相応しいメンタリティーを、今のあなたは持てていますか?

もし「なんとなくブレーキがかかっている気がする」「これだけやっているのに、なぜか壁を越えられない」「自分でも理由がよくわからないまま停滞している」と感じているとしたら、もしかしたら今の思い込みが、あなたの可能性に蓋をしてしまっているサインかもしれません。

思い込みを変えることは、弱さを認めることではありません。
これまで頑張ってきた自分をしっかり認めた上で、次のステージに合った自分に更新していくことです。

高いレベルで競技に真剣に向き合っているからこそ、その壁は高く感じられることがある。
しかし、その壁の正体は、外にあるのではなく、自分の内側にある思い込みである場合が、思っている以上に多いのです。

あなたが本当に目指したい場所へ。
その歩みを、一緒に考えていけたらと思っています。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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