あなたの当たり前が、次のステージへの壁になっているかもしれない

これまで、あなたはたくさんのことを積み上げてきたのだと思います。

毎日の練習、試合に向けた準備、うまくいかない時期の乗り越え方。
そのなかで「これが大切だ」「この感覚を大事にしよう」「こうやって取り組めばいい」と、少しずつ自分だけの軸を育ててきたはずです。

その積み重ねが、今のあなたをつくっています。

自分自身で試行錯誤しながら見つけてきたもの。
それを信じて、迷いながらも向き合い続けてきたから、今のレベルまで到達できた。
それは本当のことだと思います。

競技を続けるなかでは、たくさんの壁があったはずです。
思うような結果が出なかった時期、自分に自信が持てなくなった時期、それでも続けるかどうか迷った時期。
そういった局面を一つひとつ乗り越えてきた経験が、今のあなたの土台になっています。
そして、その乗り越え方のなかに「自分はこうやれば乗り越えられる」という感覚が、少しずつ蓄積されてきたのではないでしょうか。

だからこそ、今日これから書くことは、少し重たく感じるかもしれません。
しかし、もし今あなたが「なんかうまくいかない」「頑張っているのに結果が出ない」という感覚を持っているならば、ぜひ最後まで読んでみてください。

頑張っているのに、なぜかうまくいかない

高いレベルで競技をしている選手ほど、この感覚に陥ることがあります。

練習量を増やしてみた。
集中力を高めようとした。
もっと丁寧に、もっと本気で取り組んでみた。
それでも、なかなか自分の思うような結果が出てこない。
焦りが出てきて、さらに力が入る。
でも結果はついてこない。
そういう状況が続くと、だんだん自分自身が信じられなくなってくることもあります。

こういう状況のとき、多くの選手がどうするかというと、「もっと同じことを、もっと一生懸命やる」という方向に向かいます。

これは決して怠けているわけでも、取り組み方がいい加減なわけでもありません。
むしろ逆です。
本気でやっているからこそ、その方法をより深めようとするのです。

「もっとやれば絶対に越えられる」
「自分はこれで乗り越えてきたんだから、もう少し続ければきっと結果が出る」

そう信じ続けることができること。
それは、これまでの成功体験があるからこそです。

ただ、ここに一つの落とし穴があります。

本人は本気でやっています。
手を抜いているわけでも、逃げているわけでもない。
しかし、そのやり方自体がうまくいかない理由の一つになっている。

そういう状況は、実は珍しくありません。
なぜそういうことが起きるのか。
それを少し丁寧に考えてみたいと思います。

成功体験は、あなたを守りながら縛っている

「このやり方でここまで来れた」という成功体験は、非常に大きな力を持っています。

それは自信の源になり、迷ったときの拠り所になり、苦しい局面を乗り越える支えになります。
競技においてそういった軸を持っていることは、間違いなく強みです。

しかし同時に、成功体験には別の側面もあります。

それは「このやり方でうまくいったのだから、このやり方を信じれば次も乗り越えられる」という思い込みを、自分でも気づかないうちに強化してしまうことです。

うまくいっていた頃と同じ方法で、同じように取り組む。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、それが「もしかしたらやり方を変える必要があるかもしれない」という視点を、無意識のうちに遠ざけてしまうことがあるのです。

特に高いレベルで長くやってきた選手ほど、この傾向は強くなります。
信じてきたものの数が多い分、それを疑うことへの抵抗感も大きくなる。
「これまでこれで来たんだから」という感覚は、非常に自然なものです。
だからこそ、気づきにくい。

そして、そのやり方は確かに間違いではなかったのです。
今のレベルまで来るためには、それが必要だったし、それが正解だった。
だからこそ、余計に手放しにくい。
成功体験があればあるほど、「変える」ことへの心理的なハードルが高くなるのは、ある意味では当然のことです。

ここまでと、ここからは、違う

これまで大切にしてきたことを「捨てる」という話をしたいわけではありません。

あなたがここまでの道のりで培ってきたものは、確かにあなたを今のレベルまで連れてきてくれた、本物の財産です。
それを否定するつもりはまったくありません。

ただ、こういう見方もできます。

ここまで来るために必要だったものと、ここから先へ進むために必要なものは、同じとは限らない。

競技のレベルが上がるにつれて、求められることは変わります。
対戦相手の質が変わり、自分への要求水準が変わり、必要なスキルや判断の種類が変わってくる。
環境が変化しているのに、自分のなかにある「当たり前」だけが変わっていない。
そのギャップが、停滞感として現れていることがあります。

これは、あなたがこれまでの歩みを間違えてきたということではありません。
むしろ、あなたが次のフェーズに差し掛かっているというサインかもしれないのです。
ここまでの自分があったからこそ、今その壁の前に立てている。
そういう見方もできるのではないでしょうか。

「見直す」ことの本当の難しさ

自分がこれまで信じてきたことを見直すというのは、口で言うほど簡単ではありません。

「当たり前だと思ってきたこと」は、意識的に選んで大切にしてきたものばかりではないからです。
いつの間にかそれが「自分のやり方」として染み込み、疑いの余地なく体に馴染んでいる。
だからこそ、それを「一度立ち止まって見てみよう」とすることには、かなりのエネルギーが必要です。

しかも、そのやり方を見直そうとするとき、これまでの自分を否定されているような感覚を覚えることもあります。
苦しかった時期を乗り越えた方法、大切な試合を勝ち抜いた感覚、ずっと大事にしてきた取り組み方。
それと向き合い直すというのは、単なる技術的な修正ではなく、自分自身の歴史に触れるような作業でもあります。

だから、苦しくて当然なのです。

向き合うことにストレスがかかるのは、それだけ真剣に競技と向き合ってきたからです。
いい加減にやってきた人は、今さら何かを見直すことにそれほどの抵抗感は覚えません。
苦しいということは、それだけ本気でここまでやってきた証でもあります。

ただ、見直すことは壊すことではなく、更新することです。
これまでの自分の土台の上に、新しい自分を積み上げていくための作業です。
そのプロセスには必ずストレスが伴いますが、そのストレスこそが「変わろうとしている」サインでもあります。

そもそも、「変わる必要があるかもしれない」と感じること自体、大きな一歩です。
多くの選手はそこにすら気づかないまま、同じところをぐるぐると回り続けてしまいます。
今あなたがこのコラムを読んでいるということは、どこかでその感覚を持っているからではないでしょうか。
その感覚を、どうか大切にしてほしいのです。

うまくいかない今がチャンスである理由

どれだけ頑張っても結果がついてこない時期というのは、苦しいものです。

自分を疑いたくなることもあるでしょう。
このまま続けていていいのか、何かが根本的に間違っているのではないか、と感じることもあるかもしれません。

ただ、こういう見方もできます。

うまくいかないという感覚は、今の自分に何かを伝えようとしているのかもしれない、と。

同じやり方でうまくいかないということは、これまでの「当たり前」を一度フラットな目で見直すタイミングが来ているということかもしれません。
そのサインに気づき、正直に向き合えた選手が、次のステージへ踏み出していける。
私はこれまで多くの選手たちと関わるなかで、そう感じてきました。

うまくいかない今は、あなたが次のフェーズに入るための入り口に立っているときかもしれません。

これまで自分を支えてきた「当たり前」を、少しだけ違う角度から眺めてみること。
それだけで、これまで見えていなかったものが見えてくることがあります。
今の苦しさは、そのきっかけを与えてくれているのかもしれません。

これまでの自分を否定する必要はありません。
ただ、少しだけ、「ここまでの自分」と「ここからの自分」を分けて考えてみてほしいのです。
ここまで来るために大切だったことへの感謝を持ちながら、ここから先に必要なものを、少しずつ探していく。
そういう新しいフェーズに入っていることを、今の苦しさが教えてくれているとしたら、それはとても大切なメッセージだと思います。

うまくいかない今と、少しだけ正直に向き合ってみてください。
これまでの自分が積み上げてきたものへの敬意を持ちながら、同時に「ここから先の自分」に必要なものを、ゆっくり探していく。
そのプロセス自体が、すでに次のステージへの一歩になっていると、私は思っています。

今のあなたの苦しさが、やがて大きな変化の起点になることを願っています。
そしてその変化は、きっとあなた自身の内側から始まるものだと思っています。
このコラムが今の状況を変えるきっかけとなったら嬉しく思います。

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スポーツメンタルコーチ加藤優輝
Deportare Design代表
Deportare Design代表。埼玉県川口市出身。6歳から22歳までプロサッカー選手を目指していたが、燃え尽き症候群により競技を嫌いになり、プロになれずに現役引退。 その後、人命に関わる仕事に魅力を感じ、消防士になる。 消防士として社会貢献していく中で、夢や目標に向かっている人をサポートしたいという思いが沸き起こり消防を退職。 退職後、自分自身が燃え尽き症候群になってしまった原因を解明すべく、脳と心の仕組み・スポーツ科学、EQなどについて学ぶ。 その後、サッカー元日本代表でもあるカレンロバートの専属サポート。現在は、プロ野球選手(NPB)やプロサッカー選手(Jリーグ)、プロゴルファー(JLPGA)、プロサーファー(WSL)、実業団選手(日本代表)を始めとする、トップアスリートから本気でプロを目指すアスリートを中心にサポートをしている。

私がスポーツメンタルコーチになった理由

私はプロサッカー選手になるはずだった。小学校のころから夢はサッカー選手。中学生になっても高校生になっても大学生になっても、夢は変わらずサッカー選手。そんな私は、身長170㎝でゴールキーパーをしていた…>>続きはこちらから

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